日本では、外国人が専門的な技術や知識を習得する「技能実習制度」があります。この制度の中心となるのが「技能実習計画」です。計画の内容が不十分だと、受け入れが認められない場合もあります。
本記事では、技能実習計画とは何か、どのように作成し、どんな基準で審査されるのか、職種別の記入例や記入ミス、サポート機関までわかりやすく解説します。外国人の採用や育成を検討している中小企業・零細企業の管理職の方に、ぜひ最後までご覧いただきたい内容です。
ー 目次 ー
第1章:技能実習計画とは?
技能実習計画とは、外国人技能実習生が日本でどのような実習を行い、どのように技能を習得していくかを示す詳細な計画書のことです。この計画は、法務省および厚生労働省が定めた基準に基づいて作成され、「外国人技能実習機構(OTIT)」の認定を受けなければなりません。
技能実習計画の目的は、実習生が母国に帰国後、その習得した技術を活かし、母国の経済発展に貢献することです。そのため、日本での教育・指導内容、労働条件、実習期間などが明確にされる必要があります。
第2章:技能実習計画に記載すべき事項
- 申請者の氏名または名称と住所
- 法人役員の氏名と住所
- 技能実習を行う事業所の名称と所在地
- 技能実習生の氏名と国籍
- 技能実習の区分(第1号、第2号、第3号)
- 技能実習の目標、内容および期間
- 技能実習の実施に関する責任者の氏名
- 監理団体の名称と住所および代表者氏名(団体監理型の場合)
- 技能実習生の待遇(報酬、労働時間、休日、住居など)
- その他、主務省令で定める事項
第3章:技能実習計画の審査基準
- 技能実習生の本国において修得が困難な技能であること
- 技能実習の目標が適切であること
- 技能実習の内容が適切であること
- 技能実習の期間が適切であること
- 前段階の技能実習の目標が達成されていること(第2号・第3号)
- 技能の評価が適切に行われていること
- 技能実習を行う体制が適切であること
- 技能実習に必要な設備が整っていること
- 監理団体による監理が行われていること(団体監理型)
- 技能実習生の待遇が適切であること
- 優良な実習実施者の基準に適合していること(第3号)
- 技能実習生の受け入れ人数が適切であること
第4章:職種別の審査基準・記入例の概要
技能実習計画は職種ごとに必要な技能内容や教育体制が異なるため、それぞれの職種に応じたポイントを押さえることが重要です。以下に、主要3職種の審査ポイントと記入例の概要を示します。
詳細については、以下のURLをご確認ください。
※引用元:厚生労働省 技能実習職種・作業一覧
① 自動車整備業
審査ポイント
- 点検整備、故障診断、部品交換など実習内容が段階的であること
- 実習生が危険作業に従事する場合の安全管理体制が明記されていること
- 国家資格保有の指導者が教育を行うこと
- 定期的な実技・座学研修のスケジュールがあること
記入例の概要
- 実習1年目は、オイル・タイヤ交換などの基礎整備作業を担当
- 実習2年目以降は、エンジン整備やブレーキ点検などの高度作業に従事
- 国家資格保有の指導員が技能指導を実施
- 週2回の実技・座学教育を計画
- 実習内容とスケジュールをマニュアル化し、個別に記録を残す
② そう菜製造業
審査ポイント
- 食品衛生に関する知識と実践(HACCP等)が明記されていること
- 加熱・冷却・包装といった工程ごとの技術指導内容があること
- 実習生の衛生管理や作業マニュアルの活用が明示されていること
記入例の概要
- 実習前半は、食材の洗浄やカットなどの基礎作業を実施
- 実習後半では、加熱調理・盛り付け・包装など工程全般を担当
- HACCPに基づいた衛生指導を毎月実施
- 作業工程ごとにマニュアルを配布し、指導員が定期チェック
- 週1回の衛生・安全教育と技能習得の進捗確認を行う
③ 宿泊業
審査ポイント
- 接客、清掃、予約業務などが分野ごとに明確に区分されていること
- 実習生が対応する顧客対応業務の内容と言語支援体制が記載されていること
- IT機器や業務ソフト(予約管理など)の習得計画があること
記入例の概要
- 初期は客室清掃やベッドメイキングなど裏方業務からスタート
- 徐々にフロント応対や電話対応などの接客業務に従事
- 外国人向けマニュアルを活用し、対話形式で日本語指導を実施
- 予約管理システムの使い方をOJTで週3回トレーニング
- 苦情対応や緊急時対応について、定期的にロールプレイで訓練
第5章:技能実習計画の記入でよくあるミスと対処法
ミス内容 | 詳細 | 対処法 |
---|---|---|
実習内容が単純作業のみ | 技能習得が目的でない内容になっている | 技能の習得が確認できる工程を記載 |
指導体制が不明確 | 指導員の経験や担当が記載されていない | 指導者の名前、職歴、指導方法を明記 |
実習期間が実態と異なる | 実際の勤務シフトと合っていない | シフト表と連動して期間を調整 |
労働条件が曖昧 | 賃金や休日などが書かれていない | 契約書と一致させて明記 |
教育計画が不足 | 座学や評価方法が書かれていない | 定期的な研修や検定受験を記載 |
宿舎情報が不十分 | 生活環境の情報が記載されていない | 部屋の広さ、設備、費用を明記 |
使用言語が不適切 | 難解な日本語で書かれている | 高校生程度の日本語で簡潔に記述 |
第6章:申請から認定までの期間や流れ
- 技能実習計画の作成(1〜2週間)
必要事項をすべて記入し、雇用契約書、教育計画書などの資料を準備。 - 監理団体による確認(1週間〜)
記載内容のチェックと修正指導を受ける。 - OTITへの提出と審査(約2〜3ヶ月)
外国人技能実習機構が審査。不備があれば差し戻しあり。 - 認定通知の受領
認定後、通知書が届き、在留資格申請に進める。
第7章:認定をサポートしてくれる組織や団体
公的機関
- 外国人技能実習機構(OTIT):制度運用・審査に関する相談窓口
- 厚生労働省 国際協力推進室:技能実習制度全般の情報
- 出入国在留管理庁:在留資格の申請手続き
民間団体・専門家
- 監理団体(協同組合など):技能実習計画作成支援や指導、書類作成
- 行政書士・社会保険労務士:申請書類の作成と制度運用の専門家
第8章:よくある質問(FAQ)
- 技能実習計画はどれくらいの頻度で見直すべきですか?
企業の状況や体制に変更があれば即見直し。年1回の定期点検が望ましいです。 - 途中で計画を変更することはできますか?
可能です。変更申請が必要なので、監理団体に相談の上、正式な手続きを行ってください。 - 計画の作成に費用はかかりますか?
自社で作成すれば無料ですが、専門家に依頼すると数万〜十数万円の費用が発生することもあります。 - 実習生が途中帰国した場合、計画はどうなりますか?
その計画は終了扱いになります。新たに受け入れる場合は再申請が必要です。 - 計画が不認定になったらどうすればいいですか?
不備を修正し、再申請すれば認定されることもあります。専門家のチェックを受けると安心です。
まとめ
技能実習計画は、外国人技能実習制度の土台を支える最重要書類です。内容が曖昧であったり、実態と合わなかったりすると、不認定やトラブルの原因となります。
本記事で紹介した記載事項や審査基準、記入例、サポート機関の情報を活かし、適正な制度運用に努めましょう。実習生にとっても、企業にとっても安心して技能習得を進められる環境づくりが、制度成功の鍵です。

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