1.はじめに
日本の自動車整備業界では、少子高齢化や若年層の減少により、慢性的な人手不足が深刻化しています。
特に中小企業においては、熟練技術者の確保が難しくなっており、業務の効率化や技術の継承に課題を抱えています。このような背景から、外国人技能実習生の受け入れが注目されています。
技能実習制度は、1993年に創設され、外国人が日本の企業で技能・技術を実践的に学ぶことを目的としています。制度の主な目的は、発展途上国への技術移転による国際貢献ですが、受け入れ企業にとっても、外国企業との関係強化や社内の活性化などの効果が期待されています。
技能実習生の受け入れは、企業にとって大きなチャンスであると同時に、責任も伴います。適切な準備と体制を整えることで、技能実習生が安心して働ける環境を提供し、企業の発展につなげることができます。
2.受け入れ企業で用意が必須な人
技能実習生を受け入れる企業は、制度の適正な運用と実習生の円滑な生活・労働環境を確保するために、以下の3つの役割を担う担当者を配置する必要があります。
2-1.技能実習責任者
役割
技能実習制度全体の管理・監督を行い、実習計画の作成や監理団体との連絡調整、法令遵守の確認などを担当します。
要件
- 実習実施者(受け入れ企業)の常勤の役員または職員であること。
- 技能実習責任者講習を受講し、修了していること。
- 過去3年以内に技能実習責任者に対する講習を修了した者
- 欠格事由(① 禁固以上の刑に処せられ、執行を終えた日から5年経過しない者 ② 過去5年内に出入国または労働に関する法令に関し不正または著しい不当な行為をした者③ 未成年者)が無いこと
選任のポイント
- 企業全体の業務を把握している管理職や経営層が適任です。
- 制度の理解と法令遵守の意識が高い人物を選任することが重要です。
2-2.技能実習指導員
役割
実習生に対して、具体的な技能の指導を行います。実習計画に基づき、日々の業務を通じて技術や知識を習得させることが求められます。
要件
- 実習を行う技能について5年以上の実務経験があること。
- 実習を行わせる事業所に所属する常勤の職員であること。
- 欠格事由(① 禁固以上の刑に処せられ、執行を終えた日から5年経過しない者 ② 過去5年内に出入国または労働に関する法令に関し不正または著しい不当な行為をした者③ 未成年者)が無いこと。
選任のポイント
• 現場での実務経験が豊富で、指導力のある社員が適任です。
• 実習生の習熟度に応じた柔軟な指導ができる人物を選任することが望ましいです。
2-3.生活指導員
役割
実習生の日常生活をサポートし、相談窓口としての役割を果たします。生活面でのトラブルを未然に防ぐために重要な役割です。
要件
- 実習を行わせる事業所に所属する常勤の職員であること。
- 格事由(① 禁固以上の刑に処せられ、執行を終えた日から5年経過しない者 ② 過去5年内に出入国または労働に関する法令に関し不正または著しい不当な行為をした者③ 未成年者)が無いこと。選任のポイント
選任のポイント
- 実習生とのコミュニケーションが円滑に取れる人物が適任です。
- 異文化理解や生活習慣の違いに配慮できる人物を選任することが重要です。
担当者 | 要件 | 主な役割 |
---|---|---|
技能実習責任者 | 常勤の役員または職員講習修了者違反歴なし | 制度全体の管理・監督実習計画の作成監理団体との連絡調整 |
技能実習指導員 | 実務経験5年以上常勤の職員 | 技能の直接指導実習計画に基づく日々の業務指導 |
生活指導員 | 常勤の職員 | 日常生活のサポート相談窓口生活面でのトラブル防止 |
3.受け入れ企業で用意が必須な住居
技能実習生を受け入れる際には、彼らが安心して生活できる住居の提供が不可欠です。適切な住環境を整えることは、実習生の生活の質を向上させ、業務への集中力やモチベーションの維持にもつながります。以下に、住居に関する具体的な要件や注意点を解説します。
3-1.住居の広さと設備要件
技能実習制度では、実習生が居住する部屋の広さや設備に関して明確な基準が設けられています。
居室の広さ
- 1人あたり4.5㎡以上の居住スペースを確保する必要があります。
- 採光と換気:室面積の7分の1以上の有効採光面積を有する窓を設けることが求められます。
- 収納設備:個人別の私有物収納設備(ロッカーなど)を設置し、プライバシーの確保に努める必要があります。
- 暖房設備:寒冷地では、適切な暖房設備を設置し、快適な居住環境を提供することが求められます。
これらの要件は、技能実習制度運用要領に明記されています。
3-2.安全対策と避難経路の確保
実習生の安全を確保するため、住居には以下の安全対策が必要です。
- 火災報知器と消火器の設置:各居室や共用部に火災報知器を設置し、消火器を適切な場所に配置することが求められます。
- 避難経路の確保:2階以上の寝室がある場合、容易に屋外の安全な場所に通ずる階段を2箇所以上設ける必要があります。ただし、収容人数が15人未満の場合は1箇所でも可とされています。
- 避難設備の設置:すべり台、避難はしご、避難用タラップなどの代替措置により、安全な避難経路を確保することが求められます。
3-3.生活設備の整備
実習生が快適に生活できるよう、以下の生活設備を整備することが望まれます。
- 基本的な家具・家電:ベッド、机、椅子、冷蔵庫、洗濯機、電子レンジなど、日常生活に必要な家具・家電を備えることが求められます。
- キッチン設備:調理器具や食器類を含め、実習生が自炊できる環境を整えることが望まれます。
- 通信環境:インターネット回線やWi-Fiの整備により、実習生が家族や監理団体と連絡を取れるよう配慮することが重要です。
3-4.住居形態の選択肢
実習生の住居形態には、以下のような選択肢があります。
- 借り上げアパート:企業がアパートを借り上げ、実習生に提供する形態です。一般的に、1人または2人で1部屋を使用します。
- 借り上げ一軒家:複数の実習生を一軒家に住まわせる形態で、共同生活を通じてコミュニケーションの促進が期待されます。
- 自社所有の寮:企業が所有する寮を実習生に提供する形態で、管理がしやすい利点があります。
4.受け入れ企業で用意が必要なモノ
技能実習生が日本での生活を円滑に始められるよう、受け入れ企業は生活に必要な物品を事前に準備する必要があります。以下に、具体的な準備物とそのポイントを解説します。
4-1.生活家電の準備
実習生が快適に生活するためには、基本的な家電製品の整備が必要です。以下の家電は必須とされています。
- 冷蔵庫:食材の保存に必要です。人数に応じた容量のものを用意しましょう。
- 洗濯機:衣類の洗濯に必要です。共用の場合は、使用ルールを明確にしておくと良いでしょう。
- 炊飯器:米を主食とする実習生が多いため、炊飯器は必須です。
- 電子レンジ:食事の温めや簡単な調理に便利です。
- 掃除機:清掃のために必要です。
- 冷暖房器具:エアコンやヒーター、扇風機など、地域や季節に応じた設備を整えましょう。
4-2.家具・寝具の整備
実習生が快適に生活するためには、以下の家具・寝具の準備が必要です。
- ベッドまたは布団一式:敷布団、掛け布団、枕、シーツなどを含みます。
- テーブル・椅子:食事や学習に使用します。
- 収納家具:衣類や私物を整理するための収納スペースを確保しましょう。
- カーテン:プライバシーの確保や遮光のために必要です。
4-3.キッチン用品の準備
実習生が自炊できるよう、以下のキッチン用品を整備しましょう。
- 調理器具:鍋、フライパン、包丁、まな板、やかんなど。
- 食器類:皿、茶碗、コップ、箸、スプーン、フォークなど。
- 収納棚:食器や調理器具を整理するための棚やラックを用意しましょう。
これらの用品は、実習生が安全かつ衛生的に調理・食事を行えるよう、清潔な状態で提供することが求められます。
4-4.通信環境の整備
実習生が母国の家族と連絡を取ったり、情報収集を行ったりするために、インターネット環境の整備が重要です。Wi-Fiの設置を検討しましょう。
ポケットWi-Fiよりも、据え置き型のWi-Fiの方が通信が安定しており、実習生の満足度が高い傾向にあります。
また、契約や料金の支払いについては、企業が法人契約を結び、実習生から使用料を徴収する形が一般的です。
4-5.移動手段の確保
実習生の通勤や買い物のために、自転車の準備が必要です。一人一台の自転車を用意し、安全に使用できるよう整備しましょう。
また、自転車保険への加入が義務付けられている地域もありますので、事前に確認し、必要に応じて保険に加入することが求められます。
4-6.日用品・消耗品の提供
実習生が入居後すぐに生活を始められるよう、以下の日用品・消耗品を初回分として提供しましょう。
- トイレットペーパー
- ティッシュペーパー
- ゴミ袋
- 洗剤
- シャンプ
- 歯ブラシ
- 歯磨き粉など
これらの消耗品は、初回分を企業が用意し、その後は実習生が自分たちで購入する形が一般的です。
5.まとめ
技能実習生の受け入れに際しては、彼らが安心して生活し、業務に集中できる環境を整えることが重要です。以下に、受け入れ企業が準備すべき主な項目を一覧でまとめます。
住居の確保
実習生が快適に生活できる住居を用意することが求められます。住居の広さや設備については、以下の基準を参考にしてください。
項目 | 基準 |
---|---|
居室の広さ | 1人あたり4.5㎡以上 |
採光と換気 | 室面積の7分の1以上の有効採光面積を有する窓 |
収納設備 | 個人別の私有物収納設備(ロッカーなど) |
暖房設備 | 寒冷地では適切な暖房設備を設置 |
これらの要件は、技能実習制度運用要領に明記されています。
生活設備の整備
• 基本的な家具・家電:ベッド、机、椅子、冷蔵庫、洗濯機、電子レンジなど。
• キッチン設備:調理器具や食器類を含め、実習生が自炊できる環境を整える。
• 通信環境:インターネット回線やWi-Fiの整備により、実習生が家族や監理団体と連絡を取れるよう配慮。
安全対策と避難経路の確保
• 火災報知器と消火器の設置:各居室や共用部に火災報知器を設置し、消火器を適切な場所に配置。
• 避難経路の確保:2階以上の寝室がある場合、容易に屋外の安全な場所に通ずる階段を2箇所以上設ける。ただし、収容人数が15人未満の場合は1箇所でも可。
• 避難設備の設置:すべり台、避難はしご、避難用タラップなどの代替措置により、安全な避難経路を確保。
これらの安全対策は、技能実習制度運用要領に基づいています。
生活用品の提供
以下の日用品・消耗品を初回分として提供。
• トイレットペーパー、ティッシュペーパー、ゴミ袋、洗剤、シャンプー、歯ブラシ、歯磨き粉など
適切な住居の提供と生活環境の整備は、技能実習生の生活の質を向上させ、業務への集中力やモチベーションの維持にもつながります。企業として、法令を遵守し、実習生が安心して生活できる環境を整えることが求められます。

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