インドネシア人技能実習生への宗教的配慮と具体的な方法

1.はじめに

インドネシアからの技能実習生の受け入れ数は近年急増しています。例えば、令和5年末時点では約7万4千人のインドネシア人技能実習生がおり、前年(令和4年末)の約4万3千人から1.7倍以上に増加しました。

平成29年頃は5千人程度でしたので、わずか6年で13.6倍に跳ね上がった計算です。

技能実習生計画書認定件数(インドネシア)平成29年~令和5年

こうした増加の背景には、日本政府の外国人材受け入れ拡大策やインドネシア国内の若者の日本志向の高まりがあります。

自動車整備業でもインドネシア人材の受け入れが増えると予想されるため、宗教的・文化的な配慮が必要です。

特に、食事や礼拝、服装といった宗教習慣は日常生活に深く影響します。これらを理解・尊重することで、実習生が安心して働ける職場環境を整えられます。今後の受け入れに向けて、基本的なインドネシアの宗教事情と配慮ポイントを押さえましょう。

2.インドネシアの宗教(イスラム教)の概要

インドネシアは多宗教国家で、最大宗教はイスラム教です。インドネシア人の約87%がイスラム教徒であり、プロテスタント約7.4%、カトリック3%、ヒンドゥー教1.7%、仏教0.7%など多様な宗教が共存しています。

憲法上、宗教の自由が認められており、異なる宗教同士でも相互尊重の文化があります。

宗教 割合
イスラム教 87%
プロテスタント 7.4%
カトリック 3.0%
ヒンドゥー教 1.7%
仏教 0.7%
その他 0.2%

イスラム教は唯一神(アッラー)への信仰を中心とするアブラハム系宗教で、預言者ムハンマドの教え(クルアーン)が信仰の基礎です。信仰の要点として以下の「五行(五つの柱)」があります。

信仰告白(シャハーダ) アッラーの唯一性とムハンマドの預言者性を宣言する
礼拝(サラート) 1日5回、礼拝用マット(サジダ)を使い定時に祈る
喜捨(ザカート) 一定の資産を困窮者へ寄付する
断食(サウム) 断食月ラマダンの間、日の出から日没まで飲食を断つ
巡礼(ハッジ) 生涯に一度、メッカ巡礼を行う

中でもラマダン月の断食は特に大切な行事です。

ラマダン月はイスラム暦で9番目の月にあたり、夜明けから日没まで食事や飲み物を断つことで祈りや信心を深めます。

断食が終了すると「イード・アル=フィトル(イドゥル・フィトリ)」という祝祭(断食明け祭)があり、多くの家庭では特別な礼拝や会食を行います。また、犠牲祭にあたる「イード・アル=アドハ(イドゥル・アドハ)」では羊などの動物を犠牲に捧げ、その肉を貧しい人々と分かち合います。

イスラム教徒の日常生活では1日5回の礼拝も欠かせません。礼拝は太陽の位置に合わせて行われるため、時間帯は次のようになります。

礼拝名 時間帯(日本時間の目安)
ファジュル(朝の礼拝) 夜明け前
ズフル(昼の礼拝) 正午~午後
アスル(午後の礼拝) 午後遅く
マグリブ(日没後の礼拝) 日没直後
イシャー(夜の礼拝) 日没後~就寝前

上表のように、一日のうち午前、午後、夕方、夜と時間を分けて礼拝します。礼拝の際には礼拝場(モスク)や職場の一角など、清潔で落ち着ける場所を必要とします。

イスラム教徒は礼拝時に礼拝用マットと経典(クルアーン)を持参し、服装にも注意します(礼拝時は手足を清潔に保つ必要があります)。

受け入れ企業が気をつけるべきポイント

インドネシア人技能実習生を受け入れる際は、以下の点に留意しましょう。

● 食事の制限(ハラール対応)

イスラム教徒の食事規制にハラール(許されたもの)があります。ハラール食品では豚肉・その加工品、アルコール、イスラム式に屠殺されていない肉類は一切不可です。

また調味料やソースに日本酒やみりんなどの酒類が使われている場合もあります。具体的には、次のような配慮が必要です。

留意点 具体的な方法
豚肉・豚由来食品の排除 餃子、シュウマイ、明太子、トンカツなどに豚肉が使われていないか確認する。
アルコールの除去 みりん、料理酒、ビール・ワインなども避ける。代わりに清酒不使用の調味料や香辛料を使う。
ハラール食材や認証食品の活用 できればハラール認証を受けた食材(肉、鶏肉、調味料など)を用意する。認証マークのついた食品や、豚・アルコール無添加を明記した商品を選びましょう。
食器・調理器具の使い分け 豚肉料理に使った調理器具は洗浄するか別にし、交差汚染を防ぐ。

可能であれば、ハラール料理が提供できる外食店や配食サービスを利用したり、実習生自身に食事(お弁当)を持参してもらう方法もあります。

食事は単なる栄養補給だけでなく、宗教的義務とも関わりますので、インドネシア人実習生には大きな安心材料となります。

● 礼拝時間と場所の確保

イスラム教徒は前述の通り1日5回の礼拝を行います。会社の休憩時間や仕事の合間に礼拝を済ませられるよう、時間の配慮が必要です。例えば、昼休憩前に短い休憩を取ってズフルの礼拝を行う、夕方にマグリブのタイミングで20分ほど休憩を取るなどが考えられます。

礼拝場所についても、清潔で静かなスペースを用意できると良いでしょう。工場や職場の一部を清掃して簡易な礼拝スペースにしたり、指向性スピーカーを使って前方のメッカ方向(インドネシアから見て北西)を示すマークを置くこともあります。

実習生が個人用の礼拝マットやコーランを持ってくることも想定されますので、自由に使用できる棚やロッカーを貸与するなど、配慮すると親切です。

● 服装に関する配慮

インドネシア人の服装に関しては、清潔さと節度を重んじる文化があります。イスラム教徒の場合は、男女ともに肌の露出を控えめにすることが一般的です。

 男性

短パンやノースリーブシャツは敬遠されがちです。長袖シャツまたは半袖でも肩が隠れるもの、ズボン(カーゴパンツなど)を着用すると安心です。汗をかく職場環境では速乾性のある涼しい素材を推奨します。

女性

既婚・未婚に関係なく、多くの女性は髪を隠すイスラム布(ヒジャブ)を着用することがあります。体型が隠れるゆったりした服装(ワイドパンツや膝が隠れるスカートなど)は好まれます。制服や作業着を用意する場合、動きやすいだけでなく長め丈のズボンや上着を検討しましょう。

また、実習生の中には宗教的にひげを伸ばしたり、男性でもアクセサリーを控える人がいます。強制はできませんが、制服でネクタイを着用しない等の柔軟な対応も配慮の一つです。

帽子やキャップは禁止しないといけない職場もありますが、宗教色のないシンプルなものなら許可している職場もあります。いずれにせよ、服装・身だしなみのルールを事前に説明し、実習生が質問しやすい雰囲気をつくることが大切です。

配慮すべき点 具体的な例
食事(ハラール) 豚肉・アルコール不使用の食材、ハラール認証調味料の活用
礼拝 1日5回の礼拝時間を考慮、静かな礼拝スペースやマットの準備
服装 肌の露出を控えた服装、男性は長ズボン・袖付き、女性はゆったりした服とヘアカバー
コミュニケーション 宗教行事(ラマダンなど)や挨拶を理解し尊重する

まとめ:インドネシア人技能実習生受け入れのポイント

インドネシアからの技能実習生の増加に伴い、受入企業にはイスラム教を中心とした宗教・文化的配慮が求められます。インドネシア人の約87%がイスラム教徒であり、断食月ラマダンや1日5回の礼拝など特有の慣習があります。

職場での配慮として、ハラールに対応した食事の準備、礼拝できる休憩時間と場所の確保、服装マナーの理解が重要です。これらを実践することで、実習生は安心して仕事に集中でき、職場の雰囲気も良好になります。

また、日本企業が外国人材を受け入れる際には、相手の宗教や文化を尊重した働きやすい環境整備が必要です。信頼関係を築き、互いに理解を深めることで、受け入れ企業と実習生双方にメリットがある健全な関係を築いていきましょう。

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