女性技能実習生の可能性と職場づくり

採用

1.はじめに

日本では少子高齢化などによる人口減少の影響で、特に地方の中小自動車整備工場などにおける若年技術者の確保が大きな課題となっています。

直近の統計では、2023年末時点の在留技能実習生数は約40万5千人となり、2019年以前の水準を上回りました。2023年10月末時点の外国人雇用状況では、技能実習生の届出者数は約47万人で前年同期比14.1%増となっています。

出身国別ではベトナムが約半数を占め、次いで中国・インドネシア・フィリピンの順です。自動車整備職種は2016年から国家資格となり、整備業界でも技能実習生の採用が拡大しました。

このような中、女性技能実習生の受け入れも注目されています。男女比では男性58%、女性42%(計画認定数)となっており、多くの企業が女性の採用に取り組んでいます。女性受け入れのメリットは様々あります。

以下では、女性技能実習生の特徴や受け入れに必要な配慮、具体的なメリットをわかりやすく解説し、女性でも安心・安全な職場づくりの方法を紹介します。

年度 技能実習生数(在留者数、年末時点)
2017年 274,233人 (平成29年末)
2018年 328,360人 (平成30年末)
2019年 410,972人 (令和元年末)
2020年 378,200人 (令和2年末)
2021年 276,123人 (令和3年末)
2022年 324,940人 (令和4年末)
2023年 404,556人 (令和5年末)

 

また、令和6年10月末時点の在留資格別就労者数は以下の通りです。技能実習以外にも様々な在留資格で外国人が就労しており、特定技能や留学生の就労なども含まれます。

在留資格 就労者数(令和6年10月末時点) 前年比(増減数)
専門的・技術分野 718,812人 (+122,908人、+20.6%) +122,908人
身分に基づく活動 629,117人 (+13,183人、+2.1%) +13,183人
技能実習 470,725人 (+58,224人、+14.1%) +58,224人

2.女性と男性の技能実習生の違い

技能実習生全体では男性が58%、女性が42%(計画認定数)となっています。国籍別ではベトナムが約56%と最も多く、中国・インドネシア・フィリピンが続きます。女性実習生の年齢層は20~24歳が中心で、来日前の職歴では工場勤務や介護、飲食業などの経験者が多く見られます。

職場での違いとして、女性は細かい手作業を丁寧にこなす傾向があります。エンジンや内装部品の検査・組み立て、工場の整理整頓などを粘り強く行い、小さな異常や不具合を見逃しません。

こうしたきめ細かさは、整備品質の向上や作業場の安全性向上に寄与します。一方、男性に比べ体格差から持ち上げ作業などは補助が必要なこともあるので、協力体制を意識して作業を割り当てることが重要です。

言語面では、女性実習生は男性よりも日本語習得に熱心な傾向があります。来日前の日本語学習や面接時の学習履歴を生かし、自ら辞書で単語を調べるなど学習熱心な人が多いです。

そのため、職場では日本語での報告連絡相談(報連相)が活発に行われ、意思疎通がスムーズに進むことがあります。顧客対応においても、言葉の壁を感じさせない丁寧な対応が好評です。さらに、女性実習生の中には母国語(ベトナム語、インドネシア語など)に堪能な人もおり、他の実習生の通訳役になることでチーム連携を後押しすることもあります。

これにより誤解が減り、職場のチームワークが向上します。

ただし、女性ならではの配慮も重要です。生活面では生理休暇や宗教的配慮(食事や礼拝など)にも柔軟に対応し、安心して働ける環境を作ります。

就業面では、深夜勤務や長時間労働による体調への影響があるため、適時の休憩やシフト変更を行いましょう。妊娠が判明した場合は速やかに相談に応じ、産前産後休暇の取得を支援します。

また、日本の交通ルールや機械操作の安全教育を徹底し、社員が事故防止のためサポートすることが大切です。文化や言葉の違いによる誤解を防ぐためにも、指導担当者が毎日顔を合わせ、細かな確認を行いましょう。

女性実習生の主要国籍別認定件数(例)を以下に示します。

国籍 認定件数(R2年度) 認定件数(R3年度)
ベトナム 90,753件 (53.0%) 143,742件 (56.1%)
中国 22,879件 (13.3%) 37,208件 (14.5%)
インドネシア 21,651件 (12.6%) 24,922件 (9.7%)
フィリピン 12,812件 (7.5%) 20,360件 (7.8%)
ミャンマー 8,014件 (4.7%) 16,840件 (6.5%)

また、男女別の計画認定件数の構成比は以下の通りです。

性別 認定計画数の構成比(R4年度)
男性 58.3%
女性 41.7%
(出典:外国人技能実習機構「計画認定件数の構成比」)  

3.女性技能実習生のメリット

丁寧で正確な作業

女性実習生は細かな手作業をじっくりこなします。車内の配線点検やエンジン清掃などで、ナットの締め忘れや異物混入など小さなミスも見逃しません。

作業前後のチェックリストに沿って点検を行い、工具や部品の整理整頓も徹底するため、作業環境が常に整然と保たれます。この結果、整備ミスが減り、品質が向上します。

実際に導入企業では、「女性実習生が部品検査を担うようになってから不具合が減った」という報告もあります。さらに、女性は清掃や整備後の片付けも率先して行い、職場を常に整理された状態に保ちます。衛生面での配慮も行き届くため、クリーンな環境で安心して業務が行えます。

高いコミュニケーション能力

女性実習生は報連相を大切にし、協調性を発揮します。わからないことがあればすぐに先輩に相談し、コミュニケーションを密に取ることでミスを未然に防ぎます。顧客対応では、礼儀正しく丁寧な言葉遣いで説明できるため、お客様の安心感を高めます。

たとえば車検整備の説明時に、難しい専門用語をわかりやすく言い換えたり、丁寧に報告する姿勢が信頼につながります。また、多くの女性実習生は日本語学習にも熱心で、来日前から日本語学校で学んでくる人もいます。

そのため、他の外国人実習生の通訳役になることもあり、職場全体の意思疎通を円滑化します。総じて、女性がいることで職場内のコミュニケーションが活性化し、チームワーク向上につながります。

学習意欲とキャリア志向

女性実習生は技能習得や資格取得に強い意欲を持っています。整備士資格や日本語能力試験を取得することで将来のキャリアに直結すると理解しており、休みの日を使って勉強する人も多いです。企業側で資格取得支援を行うと、モチベーションがさらに高まります。例えば、ピューマ株式会社では整備士3級合格者に報奨金と昇給を用意し、資格取得に向けた勉強を支援したところ、合格者数が大幅に増加しました。女性実習生は責任感も強く、期限を守って提出物を仕上げるなど真面目な働き方をします。こうした前向きな姿勢は実習生自身の成長だけでなく、社内にも好影響を与え、職場全体のスキルアップにつながります。

4.まとめ

女性技能実習生の受け入れは、自動車整備業界の人手不足解消と職場活性化の両方につながります。受け入れにあたっては以下の点を整えましょう。

  • 言語・コミュニケーション支援:来日前後に日本語学習機会を設け、作業指示や報告が理解できるようにする。マニュアルや掲示は易しい日本語や母語併記で説明し、理解度を定期的に確認する。新入社員には必ず先輩社員をバディ(相棒)にしてOJTで指導し、疑問をすぐ相談できる環境を作る。多言語アプリや教材を活用して自主学習を促し、継続的な学習を支援する。
  • 安全衛生・作業環境:工具・機械の扱い方や安全ルールを徹底教育する。車両の試運転は指導員同乗で実施し、交通安全講習や応急手当・消火訓練を定期的に行う。熱中症や事故防止のため、休憩・水分補給を徹底し、通勤は複数名で行動させる。事故発生時には救護・通報を迅速に行い、会社が労災・保険手続きをサポートする。現場は常時清潔に保ち、健康診断・メンタルケアの体制を整える。
  • 生活支援・福利厚生:女性専用寮や休憩室を完備し、安全で清潔な生活環境を提供する。衣類・寝具などは日本規格に合うものを用意し、食事は栄養バランスや宗教・アレルギーに配慮する。傷害保険・医療保険に加入し、病院受診時には通訳を同行させる。最低賃金を遵守し、残業・深夜手当は支給する。給与明細を日本語で説明し内容を理解してもらう。労働契約書を母語で説明して署名させ、給与・労働条件を明確にする。
  • 相談支援・トラブル対応:社内に外国語対応可能な相談担当者を置き、定期面談で不安や要望を聞く。職場にハラスメント防止策を講じ、社内規定で相談ルートを明示する。トラブル発生時は、OTITの母国語相談窓口(8か国語対応)や監理団体にすぐ連絡し、専門家の支援を受ける。事件・事故時には警察や行政機関とも連携し、関係者間で迅速に対応する。
  • 女性特有の配慮:妊娠・出産や生理休暇など女性特有の事情に配慮し、必要な休暇や勤務調整の制度を整える。女性上司や相談役を配置し、相談しやすい環境を作る。女性視点で得た改善案は積極的に実施し、修理品質向上や顧客サービスに役立てる。安全衛生委員会等に女性の意見を反映させ、常に働きやすい職場改善を推進する。
  • 資格・キャリア支援:整備士資格や日本語検定など資格取得に対し、合格時には報奨金や昇給を約束する。定期研修や勉強会を実施し、ステップアップの機会を提供する。技能実習2号から3号への移行手続きを支援し、将来的に特定技能などへつなげて長期雇用を見据える。
  • 在留資格・法令遵守:技能実習1号から3号への更新、出入国手続きを期限内に行う。在留資格範囲外の業務をさせず、労働基準法や技能実習法を遵守する。実習記録や賃金台帳を整備し、監理団体や監督官庁の訪問指導にも対応できるようにする。制度改正や法改正にも注意を払い、必要なら専門家の助言を仰ぐ。

以上の対策を実践することで、女性技能実習生は安心して働くことができ、企業にとっても貴重な戦力となります。自動車整備業界には多くの中小企業が存在しますが、業界団体や公的機関の支援制度も活用しながら、女性が安心して活躍できる職場づくりを進めていきましょう。

引用文献: 厚生労働省「外国人雇用状況まとめ(令和6年10月末)」・出入国在留管理庁「在留外国人数統計」・外国人技能実習機構「技能実習計画認定件数」・国土交通省報道資料・JICA報告書・厚生労働省労働災害資料。

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