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1.はじめに
2000年代以降、日本の技能実習生制度は大幅に拡大してきました。
当初は中国人やベトナム人が多くを占めていましたが、近年はインドネシア人も急増しています。実際、外国人技能実習機構の統計では、2017年度に5,495人(全体の8.6%)だったインドネシア人実習生は、2023年度には74,879人(同21.4%)にまで増加し、6年間で約13.6倍となっています。
日本国内においてインドネシア人技能実習生はベトナム人に次ぐ大きな比率を占め、全体の20%前後を占めるまで存在感を高めています。中国人のシェアは減少傾向にある一方、インドネシア人は送り出し体制の強化もあって急増しています。
2.自動車整備業界における外国人実習生
自動車整備の技能実習生の数
自動車整備職種でも技能実習生の受入れが増えています。法務省の統計によれば、自動車整備分野の技能実習生数は2019年時点で約2,000人規模でしたが、2023年6月末には3,721人にまで倍増しました。
自動車整備実習生の各国の割合
2019年に行われた国土交通省の電話調査では、自動車整備実習生の出身国は「ベトナム(約58.2%)、フィリピン(約19.4%)、インドネシア(約7.6%)」の順でした。実際の人数ではベトナム1,128人、フィリピン375人、インドネシア148人でした。
これを見ると、インドネシア人は当時全体の1割未満でしたが、2024年にはインドネシア人の割合が約18%にまで上昇しています。
このように、近年はインドネシアからの整備士実習生が増加しており、全体シェアの拡大傾向が見られます。ベトナムに次いでインドネシアが上位に入りつつあり、今後さらに伸びる可能性があります。
3.インドネシア人の国民性・宗教観・職業観
多民族国家であるインドネシア
インドネシア人は、国土人口が約2億8千万人とアジア有数の大国であり、多民族国家です。最も多いのはジャワ人で全人口の約40%を占め、スンダ人、バタック人など多様な民族が混在しています。
インドネシアの言語・宗教
言語も地域によって数百種存在しますが、公用語はインドネシア語です。
宗教ではイスラム教徒が全人口の約87%を占め、世界最大のイスラム教国です。その他キリスト教徒約10%、ヒンズー教徒約1.7%、仏教徒約0.7%などが共存しています。
イスラム教徒がトンカツを食べる?寛容な宗教観
本来、礼拝時間への配慮、禁酒やハラール食への対応が求められるはずですが、各民族の慣習や宗教行事を尊重する習慣が根付いており、「郷に入っては郷に従え」で、日本の文化に合わせる人が多いです。
日本の環境に合わせて、柔軟に対応する人が多いです。職務中の礼拝は行わない、懇親会でお酒を嗜む、トンカツを食すような人もいます。
職業観・労働観
職業観・労働観としては、インドネシア人は家族や共同体を大切にする傾向があります。
家族の期待に応えるために真面目に働く意識が強く、教育熱心で技術習得に対して前向きです。実際、日本の受入企業からは「実習生が朝早くから自主的に図面を開いて勉強するなど、仕事に対して真剣に取り組む姿勢が見られた」と評され、3カ月程度で戦力級に成長する例も報告されています。
要するに、インドネシア人は素直で勤勉、向学心旺盛な国民性を持ち、日本の企業文化にも適応しやすいと言えます。
4.インドネシア国内の自動車事情と整備士育成
インドネシア国内では経済成長と中間所得層の台頭に伴い、2000年以降急速にモータリゼーションが進展しました。
自動車保有台数は、2000年頃約500万台だったものが2020年には約2,800万台と5倍以上に増加しています。下図の推移グラフからも分かるように、2005年以降は年率7~9%で増加し続けています。

【グラフ】インドネシアの自動車保有台数推移(2000~2020年)。車両数は2000年約500万台から2020年約2,800万台へと急増している。
特にジャカルタ首都圏など都市部を中心に需要が集中し、自動車メーカーも市場拡大に注力しています。その一方で、整備士不足が課題となっており、政府は全国に職業訓練所(BLK)を設置して自動車整備教育を提供しています。
また、職業高校(SMK)でも自動車整備コースが普及しており、人材育成体制が整いつつあります。
すでに一定レベルで自動車整備の業務を行うことができる人材が多くいるのがインドネシア実習生の特徴です。
5.インドネシア人実習生の定着について
インドネシア人実習生の定着率
インドネシア人技能実習生は日本での受入れ実績と経験を積み、近年は定着率も高まっています。2024年末時点で在日インドネシア人のうち20%が特定技能外国人となっており、技能実習修了者の多くが特定技能へ移行しています。
インドネシア政府も今後5年間でさらに25万人の労働者を日本に送り出す目標を掲げており、人材送り出し機関の体制強化が進められています。
インドネシア人実習生の定着支援
多くの企業では受入れ前後に日本語や日本文化の事前研修を行い、生活指導員によるサポートも充実しています。
実際、初めは受入企業側が不安を感じていたものの、インドネシア人実習生の「仕事への前向きな姿勢」を知って安心に変わったとの声が聞かれています。3カ月程度で実務に慣れ、現場を任せられる人材に成長した例もあります。
こうした事例は増えており、適切な支援と環境整備があればインドネシア人実習生は企業戦力となり得ます。
6.インドネシア人技能実習生がおすすめされる理由
以上の通り、インドネシア人技能実習生には以下のような強みがあります。
第一に、日本での受け入れ人数・比率が急増しており、制度として実績が積まれています。彼らは若くてやる気があり、向学心や技術習得意欲が高い点も魅力です。
協調性が高く礼儀正しいため、日本人の職場文化にも適応しやすいと評価されています。
また、彼らの多くは家族への責任感が強く、安定した就労を望むため、粘り強く仕事に取り組みます。
さらに、日本語教育やマナー教育を事前に受けて来日することが一般的であり、受入れ後の研修も充実しているため、就労開始後すぐに業務に集中できる点もメリットです。
宗教的配慮についても柔軟に対応してもらえるケースが多いです。企業側が配慮すべき点を理解し支援することでスムーズに協働が可能です。
以上から、自動車整備業をはじめとする技能実習生受入れを検討する企業にとって、インドネシア人技能実習生は非常に有望な人材資源と言えます。
技能実習生増加の流れは今後も続く見込みであり、インドネシア人材との協力体制を築くことは事業の生産性向上につながるでしょう。

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