1.はじめに
東南アジアには、インドネシアやフィリピン、ベトナムなどさまざまな国があります。それぞれ言語や宗教が違います。日本で技能実習生を受け入れるとき、言葉や文化の違いを知っておくとコミュニケーションが円滑になります。
本記事では、東南アジア諸国(インドネシア、フィリピン、ベトナム、ミャンマー、タイ、カンボジア、ラオス、マレーシア、シンガポール、ブルネイ、東ティモール)の11か国について、言語と宗教の特徴をまとめます。
この記事を読めば、東南アジア諸国の特徴を知り、技能実習生の受入れに有益な情報を得ることができるでしょう。
2.東南アジア諸国の言語
東南アジア諸国の言語は様々です。以下の表に各国の公用語や主要な言語をまとめました。
たとえば、インドネシアでは「インドネシア語」が公用語で、日本語とアルファベットの両方で書かれます。フィリピンでは「フィリピン語(タガログ語)」と英語が公用語です。
マレーシアでは「マレー語」が国語・公用語で、英語や中国語、タミル語なども広く使われます。シンガポールは英語、マレー語、標準中国語、タミル語の4つが公用語です。
東ティモールは「テトゥン語」と「ポルトガル語」が公用語で、インドネシア語や英語も準公用語となっています。
国名 | 公用語・主要な言語 |
インドネシア | インドネシア語(公用語)。ジャワ語、スンダ語など多くの土着語も話される。 |
フィリピン | フィリピン語(タガログ語)・英語(ともに公用語)。ビサヤ語、イロカノ語など多数。 |
ベトナム | ベトナム語(公用語)。 |
ミャンマー | ビルマ語(ミャンマー語、公用語)。少数民族言語(シャン語、カレン語など)も多い。 |
タイ | タイ語(公用語)。各地方の方言(北部タイ語、南部タイ語など)もある。 |
カンボジア | クメール語(公用語)。クメール語はカンボジア語とも呼ばれる。 |
ラオス | ラオ語(公用語)。 |
マレーシア | マレー語(国語・公用語)。中国系民族は標準中国語(マンダリン)、インド系はタミル語も話す。 |
シンガポール | 英語、マレー語、標準中国語、タミル語の4言語が公用語。 |
ブルネイ | マレー語(公用語)。英語や中国語も使われる。 |
東ティモール | テトゥン語・ポルトガル語(公用語)。インドネシア語、英語は準公用語。 |
上記のように、国ごとに公用語や多くの話者を持つ言語が決まっています。インドネシアはマレー語系の言語、フィリピンはオーストロネシア語族、ベトナムはオーストロアジア語族、ミャンマーはチベット・ビルマ語派など、言語系統も国によって異なります。
実習生との会話では、英語が通じやすい国(フィリピン、シンガポール、マレーシアなど)や、現地語を少し覚えておくと心を開いてもらいやすい国(インドネシア、ベトナムなど)があることを意識すると良いでしょう。
3.日本語学習の傾向
近年、東南アジア諸国では日本語を学ぶ人が増えています。
日本財団の調査によると、2021年の日本語学習者数はインドネシアが約71万人で世界2位、タイは約18万人(世界5位)、ベトナムは約17万人(世界6位)と、東南アジアの国々が上位に入っています。フィリピンやマレーシアも数万人の学習者がおり、将来的に実習生になる人材も多いでしょう。
日本企業に来る技能実習生の中には、日本のアニメやゲームをきっかけに日本語を学んだ人も多くいます。
たとえば、インドネシアやベトナムでは、日本語学習熱が高いとされています。実習生の日本語レベルは個人差がありますが、日本語試験(JLPT)などの成績や履歴書からある程度把握できます。
彼らの学習歴や日本への興味を尊重し、必要に応じて日本語の指導やメモ書きを活用すると良いでしょう。
4.東南アジア諸国の宗教
東南アジアは宗教も多様です。主に仏教、イスラム教、キリスト教が広く信仰されています。それぞれの国で割合は大きく異なりますが、たとえばインドネシアは約87%がイスラム教、フィリピンは約86%がカトリック(キリスト教)です。
下表は各国の主要宗教の大まかな割合です。
国名 | 仏教(%) | イスラム教(%) | キリスト教(%) |
インドネシア | 1.7 | 87.1 | 10.4 |
フィリピン | 2.0 | 6.0 | 86.0 |
ベトナム | 13.3 | 0.2 | 7.6 |
ミャンマー | 87.9 | 4.3 | 6.2 |
タイ | 92.5 | 5.4 | 1.2 |
カンボジア | 97.1 | 2.0 | 0.3 |
ラオス | 64.7 | 0.02 | 1.7 |
マレーシア | 18.7 | 63.5 | 9.1 |
シンガポール | 31.1 | 15.6 | 18.9 |
ブルネイ | 6.3 | 82.1 | 6.7 |
東ティモール | 0.0 | 0.0 | 95.0 |
- 仏教はタイ、カンボジア、ラオス、ミャンマーで多数派です。これらの国では上座部(テーラワーダ)仏教が広く信仰され、寺院や僧侶(サンガ)が村落社会で大きな役割を果たします。
- イスラム教はインドネシア、マレーシア、ブルネイで多数派です。インドネシアの約87%、マレーシアの約63.5%がイスラム教徒です。これらの国では国教や国旗の図柄にもイスラム教の影響があります。
- キリスト教はフィリピンと東ティモールで主流です。フィリピンは南米スペイン植民地時代の影響で90%以上がカトリック信徒です。東ティモールもポルトガル時代の影響で人口の大半がローマ・カトリックです。ミャンマー、インドネシア、マレーシアなどでも少数ですがキリスト教徒(プロテスタントなど)がいます。
- そのほか、インドネシアのバリ島ではヒンドゥー教(インドネシア全体では1.7%程度)が信仰されています。シンガポールには中国系の道教や仏教信徒も多く、仏教31.1%、道教8.8%、無宗教20%など多様です。
宗教的祝祭日
宗教 | 主な祝祭・行事 | 備考(代表的な国) |
仏教 | ・ウエサカ(釈迦の誕生日、5月頃)・ソンクラーン(水掛祭、4月、新年) | タイ、カンボジア、ラオス、ベトナムなど |
イスラム教 | ・ラマダン明けのイード・アル=フィトル(断食明け祭、移動祝日)・犠牲祭(イード・アル=アドハー、移動祝日) | インドネシア、マレーシア、ブルネイ |
キリスト教 | ・クリスマス(12月25日)・復活祭(イースター、3~4月) | フィリピン、東ティモール |
ヒンドゥー教 | ・ニュピ(バリ島の正月、3月頃) | インドネシア(バリ) |
各宗教の大きな祝日は、日本での労務管理にも注意が必要です。たとえば、仏教のウエサカ(仏誕祭)は5月頃に東南アジア各地で行われ、各国で年休の調整が参考になります。
タイ・ラオス・カンボジアでは4月の新年ソンクラーン(水掛祭)も重要です。イスラム教では、断食月(ラマダン)明けのイード・アル=フィトル(ハリラヤ・プアサ)や犠牲祭(イード・アル=アドハー)があり、インドネシアやマレーシア、ブルネイなどで祝日になります。
キリスト教ではクリスマス(12月25日)がフィリピンや東ティモールの祝日です。以下に主な宗教・祝祭日の例を示します。
食文化と禁忌
宗教に伴う食習慣も多様です。
イスラム教徒はハラール食が必須で、豚肉やアルコールは避けられます。マレーシアやインドネシアでは「豚肉とアルコール禁止」が基本です。
ヒンドゥー教徒(バリ島など)は牛肉を避けます。
仏教徒は厳格な菜食をするわけではありませんが、仏教の節日などにベジタリアンの日がある場合もあります。
なお、キリスト教徒や中国系の人々は特に肉食の禁忌がなく、豚肉や牛肉を食べる習慣があります。実習生がどの宗教か確認し、食材の選択や食事の提供で配慮しましょう。
たとえばムスリムの実習生にはハラール認証の調味料や肉を用意したり、仏教徒の日にはベジタリアン食を検討したりすることが礼儀になります。
5.まとめ
東南アジアからの技能実習生を受け入れる際は、それぞれの国の言語や宗教について理解しておくと円滑に受け入れできます。
本記事で紹介した通り、インドネシア・マレーシア・ブルネイはイスラム教徒が大多数で豚肉・アルコールに注意が必要です。
タイ・カンボジア・ラオス・ミャンマーは仏教国で、寺院や行事が生活に根づいています。フィリピン・東ティモールはキリスト教国であり、クリスマスが一大イベントです。
言語面では、英語が比較的通じる国(フィリピン、シンガポール、マレーシアなど)と自国語が中心の国(インドネシア、ベトナム、タイなど)があります。言語や宗教の違いを尊重し、休暇の相談や食事の提供に配慮することで、実習生の異文化ストレスを減らすことができます。
本記事をもとに実習生とのコミュニケーションに役立ててください。

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