自動車整備士として技能実習生を雇うには?中小企業が失敗しないためのガイド

整備士

自動車整備業界では、少子高齢化の影響で深刻な人手不足が続いています。特に中小規模の整備工場では、求人を出しても応募がない、若手が定着しないといった悩みを抱える経営者も多いのではないでしょうか。

そんな中、注目されているのが「外国人技能実習生」の受け入れです。技術移転を目的としたこの制度を活用すれば、意欲の高い外国人を戦力として迎え入れることができます。

しかし、制度を正しく理解せずに受け入れを進めると、トラブルやミスマッチが発生するリスクもあります。

本記事では、自動車整備業を営む中小企業の管理職の方が、「スムーズに」「トラブルなく」「質の高い人材を」採用するために知っておくべきポイントをわかりやすく解説します。

1. 自動車整備業における技能実習制度とは

技能実習制度の概要

技能実習制度は、開発途上国の人材が日本で一定期間、技術・技能・知識を学び、母国の発展に貢献することを目的とした制度です。1993年に制度化され、2024年時点で190,000人以上が日本全国で働いています。

対象職種に「自動車整備」が含まれる理由

技能実習の対象職種は「技能移転に適した職種」に限られており、自動車整備もその一つです。整備技術は機械構造、診断、修理など広範で、母国の交通安全や自動車産業の発展にも直結するため、対象職種として認められています。

制度の目的と企業にとっての利点

  • 若く意欲的な人材を確保できる
  • 3年間(または最長5年間)安定して働いてもらえる
  • 将来的な海外展開や現地とのネットワークづくりにつながる

2. 技能実習生はどこまで自動車整備が可能か

整備士資格がなくても可能な作業

  • 車両の外装・内装の点検
  • オイル交換やタイヤ交換
  • 工具の準備や部品の取り外し補助
  • 整備士の指示に従っての部品交換

ただし、「ブレーキ分解整備」や「車検整備」など、法令で有資格者に限定されている作業は実習生が単独で行うことはできません。

実習の進捗に応じた業務範囲の拡大

技能実習は3年間(または5年)にわたる段階的な制度であり、実習生は1年目から順に、基本作業→応用作業→応用技術へと段階的に技能を習得していきます。

  • 1年目:工具や部品の取り扱い、基本的な点検作業
  • 2年目:定期点検や交換作業など、実務的な整備補助
  • 3年目:整備士の指導のもと、一定の応用作業

安全管理と教育体制が不可欠

整備作業には高い安全性が求められます。技能実習生が事故に巻き込まれることのないよう、作業前の安全教育、マニュアル整備、指導体制の整備は欠かせません。

また、外国人にとっては工具や整備用語の意味が分からないこともあるため、やさしい日本語や写真付きの作業手順書などを用意すると理解が進みます。

◎ 実習生の力を引き出す育成とチーム体制で大きな成果も

  • 定期点検や簡単な部品交換を任せることで、ベテランは難度の高い整備に集中できる
  • 整備作業の前準備・後片付けを実習生が担うことで、作業サイクルが加速する
  • 複数年の実習を通じて、日本語・技術・現場理解が進み、後半にはかなりの応用業務も可能になる

さらに、「教える側にも教える力がつく」という声も多く聞かれます。技能実習生の存在が、社内の教育体制の見直しやマニュアル整備にもつながり、組織力全体の底上げにも貢献するのです。

実際に、複数年にわたって実習生を受け入れている整備工場では、「2年目からは日本人スタッフと並んで前線で活躍している」という事例も報告されています。

3. 技能実習生を雇うための基本的な流れ

受け入れに必要な体制

技能実習生を雇うには、単独で直接雇用することはできません。一般的には「監理団体」と呼ばれる外部機関を通じて、送り出し国と連携しながら受け入れを行います。

監理団体を通じた受け入れの仕組み

監理団体は、実習生の紹介、ビザ手続き、入国前研修、日本語教育などを担います。企業は監理団体と契約を結び、費用を支払うことで、制度に則った受け入れが可能となります。

具体的なフロー(問い合わせ~配属まで)

  1. 監理団体に問い合わせ・面談
  2. 送り出し機関(海外)とのマッチング
  3. 現地での面接・選考
  4. 書類提出・実習計画書の作成
  5. 在留資格認定→入国
  6. 入国後研修(1か月程度)→企業配属

平均的なスケジュール感(半年〜1年)

実際の配属までには、選考から最短で半年、通常は約8〜12か月程度かかるのが一般的です。

4. 技能実習生を雇うにはどれぐらいの費用がかかるか

初期費用(1人あたり)

項目 費用の目安(1人) 内容
監理団体への加入金・手数料 約20〜30万円 手続き・選考・書類作成などの費用
現地送り出し機関への手数料 約10〜20万円 現地面接、教育、渡航準備など
渡航費(航空券) 約5〜10万円 国や時期によって変動
入国後の研修費用(法定講習) 約5〜10万円 日本語・法令・生活マナーなどの教育費用
寮の整備・生活用品の購入費用 約5〜10万円 寝具・調理器具などの初期生活支援

合計:約45〜80万円/1人

月額費用(1人あたり)

項目 費用の目安(1人/月) 内容
賃金 東京都:187,104円/月
鳥取県:151,200円/月
最低賃金 × 月168時間で算出
監理団体への監理費 約2〜3万円 毎月の実習監理、指導サポート等
寮の家賃(自己負担を除く分) 約1〜2万円 実習生本人から一部徴収するケースもある
社会保険料などの法定費用 約2〜3万円 健康保険・厚生年金・雇用保険など

合計目安:東京都:約22〜26万円/月、鳥取県:約19〜23万円/月

実際の費用感と見込み収支

例えば、整備士補助として月に20万円の成果を期待できる場合、採算は合います。ただし、採用初期は教育コストが高いため、1〜2年かけて育成し、長期的な戦力として活用することが重要です。

また、福利厚生や相談体制をしっかり整えることで、離職や失踪リスクを減らし、結果的にコストパフォーマンスが高まります。

5. 採用面接を上手く進めるためのポイント

事前に求める人材像を明確にする

採用前に「どんな業務を任せたいのか」「どのような性格や能力を重視するのか」を社内で共有し、選考基準を明確にしましょう。

  • 整備士資格を目指す意欲がある
  • 真面目で協調性がある

面接時は「やさしい日本語」で具体的に質問する

通訳を介して行う場合でも、面接官が「やさしい日本語」で質問することで、実習生の理解度を確認しやすくなります。

  • なぜ日本で働きたいですか?
  • 自動車を直したことがありますか?
  • グループで働くのは得意ですか?

実際の仕事風景を動画や写真で共有する

実際の職場環境や作業内容を伝えることで、実習生が働くイメージを持ちやすくなり、ミスマッチの防止にも効果的です。

志望動機やキャリア意欲を確認する

本当に整備技術を学びたいと思っているのか、あるいは単に日本で働きたいのか、面接での会話から見極めることが大切です。将来の目標を聞くことで長期的に活躍できる人材かを判断できます。

面接後の評価は多面的に行う

受け答えだけでなく、態度や反応、表情なども含めて評価しましょう。複数人の面接官による意見交換が客観性を高めます。

6. 技能実習生の活用によって得られるメリットと実例紹介

中小整備業者による成功事例

ある関西の整備工場では、3名の技能実習生を受け入れたことで以下の成果が得られました。

  • 点検業務の回転率が向上
  • 若手社員とのチームワークが活性化
  • 現地送り出し機関と連携し、将来的な海外進出も視野に

業務効率の改善、人材の定着、現地とのネットワーク形成

実習生は素直で勤勉な人材が多く、整備業の中核人材として育てることが可能です。帰国後も現地での窓口となるなど、長期的な人的資産となり得ます。

将来的な特定技能への移行と長期雇用の可能性

技能実習を終えた人材が「特定技能」へ移行すれば、5年以上の長期雇用も可能になります。実習中に育成した人材を継続的に活用することで、企業にとって大きな戦力となります。

7. よくある質問(FAQ)

Q1. 技能実習生の日本語レベルはどの程度か?

入国前にN4レベル(基本的な日本語の読み書き・会話)の取得が求められることが多いです。ただし、実務レベルでは通じないこともあるため、社内での日本語研修やサポートが必要です。

Q2. 途中で帰国してしまうことはある?

家族の事情や健康問題、労働条件の不一致で途中帰国するケースもあります。事前にしっかり説明を行い、生活支援体制を整えることが予防策になります。

Q3. 特定技能との違いは?

技能実習は「人材育成」が目的、特定技能は「労働力確保」が目的です。制度の目的、在留期間、要件などが異なります。

まとめ

自動車整備業界における技能実習生の受け入れは、中小企業にとって人手不足の解消だけでなく、将来を見据えた組織づくりにもつながるチャンスです。

しかし、制度の理解不足や準備不足によるトラブルも起こり得ます。信頼できる監理団体と連携し、社内体制を整えた上で、計画的に進めることが成功のカギです。

技能実習生の力を上手に活かし、持続的な企業成長につなげましょう。

「実習生受入の費用を知りたい」
「他組合と比較したい」
「予算感を知りたい」

こんな方はこちらから価格表をダウンロードしてください。
「実習生受入の費用を知りたい」
「他組合と比較したい」
「予算感を知りたい」

こんな方はこちらから価格表ダウンロード

関連記事

特集記事

TOP

お問い合わせ

お電話

お気軽にお電話ください
☎ 03-5615-9035
平日9:00~17:00

CLOSE

お問い合わせ

お電話

お気軽にお電話ください
☎ 03-5615-9035
平日9:00~17:00