日本で働く外国人労働者が増える中、「特定技能外国人」や「技能実習生」の雇用管理に悩む企業も増えてきました。特に、「トラブルが起きたときに解雇してよいのか?」「解雇したら入管や監理団体に報告が必要なのか?」といった疑問を持つ経営者や管理職の方も多いのではないでしょうか。
本記事では、外国人雇用の中でも特に注目される「特定技能」と「技能実習」に関する解雇のルールや注意点について、高校生でも理解できるレベルでやさしく解説します。人手不足を補うために外国人を雇用する中小企業の皆様にとって、法令を守りつつ円滑にマネジメントするための知識として、ぜひご活用ください。
ー 目次 ー
第1章:基本的な解雇ルール
① 無期雇用の場合
無期雇用(正社員など)の場合、労働者の生活を守るために、会社が自由に解雇することはできません。解雇には「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」が必要です。たとえば、重大な規律違反や業績悪化による人員削減などがこれにあたります。
また、労働基準法では30日前の解雇予告、または30日分の解雇予告手当が必要です。
② 有期雇用の場合
契約社員やパートタイムなどの有期雇用でも、契約期間中の解雇は原則として認められていません。ただし、重大な規律違反など「やむを得ない事情」がある場合は例外として解雇が可能です。
有期契約の満了時には更新をしないという形での「自然退職」も可能ですが、その際も更新を期待させるような言動があった場合には注意が必要です。
③ 外国人と日本人で解雇ルールは異なるか?
基本的に、外国人だからといって日本人と異なる解雇ルールが適用されることはありません。ただし、外国人には在留資格という制度があり、解雇によって在留資格に影響が出る場合があります。特定技能や技能実習のような特定の在留資格を持つ人を解雇する際には、追加の手続きや配慮が求められます。
第2章:特定技能外国人を解雇するときのルール
特定技能外国人は、「特定技能1号」または「2号」の在留資格で、日本の指定業種で働く外国人労働者です。この制度は労働力不足を補うためのものですが、企業には受け入れ責任が課せられています。
解雇できないケース
以下のような理由では、特定技能外国人を解雇することは原則として認められていません。
- 勤務態度や能力に多少の問題があるが、指導歴や改善の機会を与えていない
- 社内トラブルで、本人だけに非があると明確でない場合
- 妊娠、出産、病気など、正当な私的事情を理由とする解雇
上記に該当する場合、解雇は「不当解雇」と判断されるリスクがあり、トラブルにつながる可能性があります。
解雇できるケース(法的に正当な理由がある場合)
以下のような場合は、十分な証拠と記録があれば、特定技能外国人の解雇が認められる可能性があります。
- 重大な服務規律違反(例:無断欠勤の繰り返し、暴力行為など)
- 経営上の都合によるやむを得ない人員整理(整理解雇)
- 職務上の重大なミスや違法行為があり、指導後も改善が見られない
これらの場合でも、必ず書面で記録を残し、本人に説明したうえで手続きを進めることが重要です。
出入国在留管理庁への届出義務
特定技能外国人を解雇した場合、14日以内に出入国在留管理庁に「受け入れ困難届出書」を提出する義務があります。
第3章:技能実習生を解雇するときのルール
解雇できないケース(原則として不可)
技能実習制度では、実習継続を前提として在留資格が与えられているため、以下のような理由による解雇は原則認められていません。
- 指導が不十分な状態での「仕事ができない」という判断
- 実習内容が企業側の都合で大きく変更された結果、実習が成り立たなくなった
- 妊娠、病気、家庭の事情など正当な私的理由による一時的な就業困難
これらのケースでは、実習継続に向けての配慮や調整が求められます。
解雇できるケース(やむを得ない事情がある場合)
以下のような場合には、「やむを得ない事情」として技能実習生の解雇が認められる可能性があります。
- 重大な規律違反を繰り返す(例:無断欠勤、職場での暴力、犯罪行為など)
- 経営悪化により企業の継続雇用が明らかに困難になった
- 実習生本人が実習継続を明確に拒否し、改善の見込みがない
これらの場合でも、必ず監理団体に相談し、三者協議のうえで正式な手続きを取ることが必要です。
監理団体への報告が必要
技能実習生を受け入れている企業は、必ず「監理団体」(例:協同組合など)と契約しています。実習生を解雇する場合は、必ず監理団体に相談し、了承を得る必要があります。
第4章:解雇後の影響
企業への影響
不適切な解雇は、今後の外国人受け入れに支障をきたす可能性があります。また、企業の評判にも影響が出るため注意が必要です。
外国人本人への影響
特定技能では職場を失うと原則として資格喪失につながり、技能実習でも実習継続が困難になります。その結果、帰国を余儀なくされるケースもあります。
第5章:解雇時に必要な手続き(雇用側)
① 特定技能外国人の場合
- 解雇理由の記録と説明
- 解雇通知書の交付(できれば母国語でも)
- 出入国在留管理庁への届出(14日以内)
- ハローワークへの離職票の発行
- 可能であれば転職支援
② 技能実習生の場合
- 監理団体への報告・相談
- 実習生との面談
- 入管への報告
- 必要に応じて転籍支援
第6章:解雇時(転職)に必要な手続き(外国人側)
① 特定技能外国人の場合
- 転職先を探す(最大3か月の猶予)
- 所属機関変更届の提出
- 雇用契約書などの再提出
② 技能実習生の場合
- 監理団体が転籍先企業を手配
- 実習計画の変更申請
- 入管での許可取得後に転籍
第7章:よくある質問(FAQ)
Q1. 特定技能外国人はすぐに解雇できますか?
A. 法律上は可能ですが、「合理的理由」と「相当性」が必要です。
Q2. 技能実習生が仕事をしないので解雇したいです。可能ですか?
A. 原則不可。まずは監理団体に相談してください。
Q3. 解雇後に入管へ報告しないとどうなりますか?
A. 指導や制度利用停止などのリスクがあります。
Q4. 解雇後に企業が転職先を紹介する必要はありますか?
A. 特定技能の場合は望ましい。技能実習生は監理団体が対応します。
まとめ
外国人労働者の解雇は、日本人と同様に慎重な対応が求められます。制度や在留資格によってルールや手続きが異なるため、事前にしっかり確認し、必要に応じて専門家や監理団体に相談しましょう。

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