自動運転レベル5とは?自動運転の概要とこれからについてわかりやすく解説

整備士

1.はじめに

近年、世界各国で自動運転技術の実用化に向けた動きが加速しています。

アメリカではWaymoやCruiseなどの企業がレベル4の自動運転タクシーの実験・運用を始めており、2022年6月にはサンフランシスコで無人タクシーの営業運転がスタートしました。

ヨーロッパでもフランスやノルウェーなどで自動運転バスやタクシーの実験が進んでおり、スイスは2025年から公道での無人自動運転を法的に認める予定です。


自動運転の技術革新が進む中、自動運転の最終段階である「レベル5」とは何か、その実現時期はいつなのかなどを理解しておくことは重要です。

本記事では、自動車整備業の経営者が全体像をつかめるよう、自動運転技術のレベル別の概要や歴史、市場動向、最新事例などをやさしく整理して解説します。

2.自動運転とは?レベル1~5の解説

自動運転技術は、車の「認知・判断・操作」をシステムが代替する技術です。世界共通の基準であるSAE(米国自動車技術者協会)の定義では、レベル0からレベル5の6段階に区分されています。

日本の国土交通省もSAE区分に対応した呼称や運転主体(人かシステムか)などを定義しています。簡単に説明すると以下の通りです。

レベル0(運転自動化なし)

従来型の車で、ドライバーがすべての運転操作を行います。衝突被害軽減ブレーキなどの安全装置があっても、人が主体です。

レベル1(運転支援)

システムが「縦方向(速度)か横方向(ハンドル)のいずれか片方」の制御をサポートします。

例えば、前走車に追従するアダプティブクルーズコントロールや車線維持支援など、一方のサブタスクだけを自動化したものがこれに当たります。

レベル2(部分運転自動化)

システムが「縦・横両方」の制御(加減速+操舵)を同時に行えるようになります。複数のADAS技術を組み合わせて高速道路などで車線内追従運転が可能になり、「ハンズオフ」(高速道路など一定条件下でハンドル操作不要)も実現します。

実際に2019年頃から日産やトヨタ、スバルなどがハンズオフ機能付きレベル2車を発表し、2024年10月時点では国産メーカーのほぼ全車種に高度なレベル2機能が搭載されつつあります。

レベル3(条件付運転自動化)

システムが「限られた条件下で、すべての運転タスクを実行」します。条件として典型的なのは高速道路の渋滞などで、ドライバーは前方監視義務から解放され、「アイズオフ」(目視不要)で運転できます。

日本では2020年4月の道路交通法改正でレベル3の走行が初めて法的に認められ、2021年にはホンダ「レジェンド」(Honda SENSING Elite搭載)が世界初の市販レベル3車となりました。レベル3では条件が外れた際にシステムがドライバーに手動運転を要求する必要があります。

レベル4(高度運転自動化)

システムが「限定された運行領域(ODD)の中で、すべての運転タスクを担当し、異常時も自ら対処できる」レベルです。

つまりドライバーが不在でも走行できる「運行設計領域内無人運転」です。

2023年4月に法改正があり、日本国内でも条件付きでレベル4公道走行が可能になりました。例として、福井県永平寺町の公道(約2km)でレベル4バスが運行開始し、茨城県日立市のBRT専用道(約6.1km)で中型バスのレベル4営業運行が2025年2月から始まっています。

ただしこれらは限られた専用道区間での実証であり、一般道を自由走行する市販車はまだ実用化に至っていません。

レベル5(完全運転自動化)

システムが「ODDの設定なしに、いかなる状況・場所でもすべての運転タスクを完全自動で行う」状態です。あらゆる道で、天候や障害物があっても自動運転を実行できる理想形です。

日本のロードマップや世界の計画でも、レベル5の実現時期は明確に示されておらず、技術的にも現状では非常に難しいとされています。しかしセンサー技術やAIの進歩に伴い、いずれ実現に向かう可能性は期待されています。

先進運転支援システム(ADAS)搭載車両と条件付き自動運転車(レベル3以上)の世界的な普及予測。

富士キメラ総研によれば、2040年にはADAS搭載車両が約8,475万台、レベル3以上(条件付き~完全自動運転)車両が約4,112万台に達すると見込まれています。これは自動運転技術の普及がこれから大きく加速する可能性を示しています。

3.自動運転の歴史(2000年以降)

自動運転研究は20世紀から進められてきましたが、ここでは2000年以降の主な動向を簡単に振り返ります。

2004年から米国で国防高等研究計画局(DARPA)が「Grand Challenge」を開催し、荒野や都市部で自動運転車の公道走行を競技形式で行いました。

当初は2004年の第1回大会で誰もゴールできませんでしたが、2005年には5台が完走、2007年には6台が都市部レースを完走する成果を出し、自動運転技術の発展に大きな刺激となりました。

また、2010年代に入るとGoogle(現Waymo)やTeslaといった民間企業が自動運転開発を本格化させ、テスラは2015年に「オートパイロット」機能を導入し話題になりました。2010年代後半には欧米でレベル4・5の実証実験が各地で進み、ドローン配送など新たな応用も研究されています。

日本では、2000年代以降「ASVプロジェクト」などで先進安全技術(自動ブレーキ等)の普及を進めつつ、2010年代からは自動運転技術の研究開発も活発化しました。

2016年には「官民ITS構想・ロードマップ」で2025年に高速道路でのレベル4実現を掲げ、2020年には国際的にみても先駆けてレベル3技術基準を制定しました。

その後、2020年4月に道路交通法と道路運送車両法が改正され、レベル3走行が初めて法的に認められ、同年11月にはホンダ・レジェンドが世界初の市販レベル3車(「ホンダセンシング エリート」搭載)として型式認定を取得しました。

2023年にはレベル4実証実験を後押しする法整備も進み、過疎地や専用道での実験ができるようになっています。

4.現在の状況

現在、世界各地でさまざまな実証実験や先行サービスが始まっています。自動運転の普及には新技術の検証だけでなく、制度整備や社会受容も重要です。主な事例を挙げてみましょう。

  • 実証実験(国内):茨城県日立市では、みちのりHDや産総研などのコンソーシアムが2018年度から準備し、2025年2月から中型バスによるレベル4営業運行を開始します。日立電鉄線跡のBRT専用道路(約6.1km)区間で、国内最長距離・国内初の中型バスレベル4運行となる計画です。ほか福井県永平寺町では2023年5月に約2kmの遊歩道でレベル4バスの無人運行が始まっています。
  • 世界初の自動運転バス「e-ATAK」:トルコの商用車メーカー・Karsanが開発したレベル4電動バス「e-ATAK」は、2021年からノルウェーやフィンランドで旅客運行を行っており、2025年8月にはスウェーデン・ヨーテボリ市内で稼働予定です。Karsan社によれば、e-ATAKはすでにアメリカ、ノルウェー、フランス、ルーマニア、フィンランド、オランダ、スイス、トルコなど8か国で商用運行や実証実験に利用されています。
  • 海外での走行:アメリカではWaymoがアリゾナ州フェニックスでレベル4タクシー(無人配車サービス)を運用しています。欧州ではフランスでL4バス実験、スイスでは2025年から高速道路で車載AIによる運転が可能になるなど、各国で先進事例が出てきています。中国では2022年に武漢市でレベル4タクシーの運用が始まっています。日本国内でも、地方自治体がMaaS型(移動サービス型)の自動運転実験を進めており、2025年度までに全国で約50か所程度で自動運転移動サービスを実現する目標が掲げられています。

公共交通における自動運転バスの導入台数予測。MM総研の調査では、2024年には累計約100台にすぎない自動運転バスが、2030年には1,200台、2040年には7,000台に達すると予測されています。同研究では、2035年以降にバス運転手の不足が深刻化するため、2040年までに約1万3,000台の自動運転バス導入が必要とも試算しています。

5.レベル5の実用化はいつか?

レベル5完全自動運転の実用化時期は、世界的にも未定で長期的な課題とされています。

現在のロードマップや計画では、日本・欧米ともに具体的な年度目標は示されていません。たとえば経済産業省の資料によれば、現時点では「技術的に実現困難」としつつも、2030年以降に研究・実証を進め、2050年頃までに性能向上を図る方針が示されています。

今後の市場予測でも、自動運転技術の普及には数十年を要するとみられています。

ある推計では、世界の新車販売に占める自動運転車(レベル3以上)は2030年に約30%、2040年に約40~60%に達し、2050年には80~100%になるとされています。

しかしこれはあくまでモデル予測の一例であり、実際には技術開発や法整備、社会受容の進み具合によります。現状では「いつ実用化されるか分からないが、取り組みは世界中で続いている」段階といえるでしょう。

6.まとめ

自動運転技術は、ここ数年で急速に社会実装に向けた段階を進めています。自動車整備業の経営者にとっても、今後はADASなどの技術対応や、レベル3・4車両のメンテナンス対応など、新たな準備が必要です。

同時に、レベル5に向けては新しいサービスやビジネスモデルが生まれる可能性があります。本記事で説明したように、レベル1~4までの技術は既に実用化の段階にあり、世界の先進事例を参考に今後の展望をつかむことができます。

レベル5についてはまだ先の話ではありますが、技術の進歩や法制度の整備は日々進展しています。常に最新情報をフォローしつつ、技術を理解し準備を進めることが、自動車整備業の未来に備えるポイントです。

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