企業は資格取得の費用は負担する?どこまで受入企業が費用を負担するのか詳しく解説

採用

1.はじめに

日本の中小企業、特に自動車整備業界では、深刻な人手不足が続いています。このような状況の中、外国人技能実習生の受け入れを検討する企業が増加しています。しかし、受け入れに際しては、さまざまな

技能実習生受入れの企業の方から、よくどこまで費用を負担すれば良いのかという質問をいただきます。

受入れ企業には実習生の生活支援や教育、資格取得に関する費用など、多岐にわたる負担が求められます。これらの費用負担について明確なガイドラインが存在しない場合、企業と実習生の間でトラブルが発生する可能性があります。

例えば、技能実習生が取得する資格には、技能検定や日本語能力試験などがあります。これらの試験にかかる費用は、企業が負担する場合もあれば、実習生が自己負担する場合もあります。そのため、事前に費用負担の範囲を明確にし、双方が納得する形にすることが重要です。

この記事では、技能実習生の資格取得に関する費用負担について、法的な義務や一般的な慣行、実際の事例などを交えて詳しく解説します。

2.技能実習生にかかる費用と企業の負担が義務付けられている費用

技能実習生の受け入れには、企業が法的に負担を求められる費用と、慣行として負担することが望ましい費用があります。ここでは、企業が負担すべき主な費用項目とその概要を紹介します。

2-1.受け入れ前の費用

技能実習生を受け入れる前に発生する費用には、以下のようなものがあります。外国人材ナビ

費用項目 概要 費用目安 企業の負担義務
送り出し機関への手数料 現地での人材募集・選考、日本語教育などの費用 30万〜50万円/人 あり
監理団体への管理費 実習計画の作成・管理、定期訪問・指導などの費用 月額3万〜5万円/人 あり
在留資格申請手数料 在留資格認定証明書の申請にかかる費用 4,000〜6,000円/人 あり
入国時の健康診断費用 入国前の健康状態確認のための費用 1万〜3万円/人 あり
渡航費(航空券代) 母国から日本への渡航にかかる費用 5万〜15万円/人 あり

これらの費用は、法的に企業が負担することが義務付けられています。特に、送り出し機関や監理団体への支払いは、実習生の適切な受け入れと管理に必要な費用です。

2-2.入国後の講習費用

技能実習生は、入国後に1カ月間の講習を受けることが義務付けられています。この講習には、日本語教育や生活指導、安全衛生教育などが含まれます。

講習内容 概要 費用目安 企業の負担義務
日本語教育 日常会話や業務に必要な日本語の習得 3万〜5万円/人 あり
生活指導 日本の生活習慣やマナーの習得 1万〜3万円/人 あり
安全衛生教育 労働安全や衛生管理に関する教育 1万〜3万円/人 あり

これらの講習費用も、企業が全額負担することが求められています。講習を通じて、実習生が日本での生活や業務にスムーズに適応できるよう支援することが重要です。

2-3.住居の提供と関連費用

企業は、技能実習生に対して適切な住居を提供する義務があります。住居の提供に関しては、以下のような費用が発生します。

費用項目 概要 費用目安 企業の負担義務
住居の初期費用 賃貸契約時の敷金・礼金など 20万〜30万円 あり
家具・家電の購入費 生活に必要な家具や家電の購入 10万〜15万円 あり
家賃の補助 実習生の負担を軽減するための家賃補助 家賃の一部(例:2万円/月) あり

住居の提供に関しては、実習生が快適に生活できる環境を整えることが求められます。また、家賃の一部を実習生に負担させる場合には、以下の上限があります。

  • 賃貸物件の場合 … 賃料を入居する技能実習生の人数で割った額
  • 物件保有の場合 … 宿舎の総工費÷宿舎の耐用年数÷12ヶ月÷実習生の人数

2-4.保険加入と医療費の負担

技能実習生は、日本での生活中に病気やけがをする可能性があるため、保険への加入が推奨されています。企業は、以下のような保険への加入を支援することが望まれます。

保険種類 概要 費用目安 企業の負担義務
外国人技能実習生総合保険 病気やけが、賠償責任などをカバーする保険 3万〜9万円/人(37ヶ月分) あり(推奨)
健康保険・厚生年金保険 日本の公的医療保険制度への加入 給与の約15%〜20% あり

これらの保険への加入は、実習生の健康と安全を守るために重要です。企業は、保険料の全額または一部を負担し、実習生が安心して生活できる環境を整えることが求められます。

2-5.帰国費用の負担

技能実習生の実習期間終了後の帰国にかかる費用は、企業が負担することが義務付けられています。これには、航空券代や空港までの交通費などが含まれます。

費用項目 概要 費用目安 企業の負担義務
帰国渡航費 日本から母国への航空券代 5万〜15万円/人 あり
空港までの交通費 住居から空港までの移動費 1万〜2万円/人 あり

これらの費用は、企業が負担することが義務付けられています。特に、帰国渡航費については、監理団体または実習実施者が全額を負担しなければならないと明記されています。

また、技能実習生が帰国する際には、住居の退去手続きや公共料金の清算など、さまざまな手続きが必要となります。これらの手続きにかかる費用についても、企業が適切に対応することが求められます。

なお、技能実習生が帰国困難な事情により在留資格を「特定活動」に変更した場合でも、帰国費用の負担は原則として企業が行うこととされています。この「特定活動」については、違う記事で詳しく扱います。

3.企業の負担が義務付けられていないが、負担しているケースが多い費用

技能実習制度において、企業が法的に負担を義務付けられている費用以外にも、実際には多くの企業が自主的に負担している費用があります。

これらの費用は、実習生の生活環境の整備や技能習得の促進、企業との信頼関係の構築に寄与するため、結果的に企業の生産性向上や人材定着率の向上につながることが期待されます。

3-1.技能検定試験の受験料

技能実習生は、実習期間中に技能検定試験を受験することが求められます。この試験は、実習生の技能習得度を評価するものであり、合格することで実習の成果を証明できます。

受験料は実習生が負担することも可能ですが、多くの企業では、実習生のモチベーション向上や技能習得の促進を目的として、受験料を負担しています。

費用項目 概要 費用目安 企業の負担状況
技能検定試験受験料 技能実習生が受験する技能検定試験の受験料 約2万円/人 多くの企業が負担

3-2.日本語能力試験の受験料

日本での生活や業務において、日本語能力は非常に重要です。実習生が日本語能力試験(JLPT)を受験することで、日本語の習得度を客観的に評価できます。企業によっては、実習生の日本語能力向上を支援するために、受験料を負担するケースがあります。

費用項目 概要 費用目安 企業の負担状況
日本語能力試験受験料 実習生が受験する日本語能力試験の受験料 約5,000円〜6,000円/人 一部の企業が負担

3-3.通勤費用の補助

実習生が職場まで通勤する際の交通費については、法的な負担義務はありませんが、企業が通勤費用の一部または全額を補助するケースがあります。

特に、公共交通機関を利用する場合や、職場が遠方にある場合には、通勤費用の補助が実習生の負担軽減につながります。

費用項目 概要 費用目安 企業の負担状況
通勤費用補助 実習生の通勤にかかる交通費の補助 月額5,000円〜1万円/人 一部の企業が負担

3-4.作業服や安全靴などの支給

実習生が業務を行う際に必要となる作業服や安全靴などの備品については、企業が支給することが一般的です。これらの備品は、実習生の安全確保や業務効率の向上に寄与します。

また、実習生が自費で購入する場合、経済的な負担となるため、企業が支給することで実習生の負担軽減につながります。

費用項目 概要 費用目安 企業の負担状況
作業服・安全靴の支給 実習生が業務で使用する作業服や安全靴の支給 1万円〜2万円/人 多くの企業が負担

3-5.生活用品の初期支援

実習生が日本での生活を始める際に必要となる生活用品(寝具、調理器具、日用品など)について、企業が初期支援として提供するケースがあります。これにより、実習生が安心して生活を始めることができ、早期の業務適応が期待されます。

費用項目 概要 費用目安 企業の負担状況
生活用品の初期支援 実習生が生活を始める際に必要な生活用品の提供 2万円〜5万円/人 多くの企業が負担

4.企業が負担しているケースは少なく、実習生との話し合いで負担を決めるべき費用

技能実習制度において、企業が法的に負担を義務付けられていない費用であっても、実習生の生活環境や業務遂行に影響を及ぼすものがあります。

これらの費用については、企業と実習生が事前に話し合い、負担の有無や割合を明確にすることが重要です。

4-1.通信費(携帯電話・インターネット)

実習生が日本での生活や業務を行う上で、通信手段は不可欠です。

しかし、通信費の負担については法的な義務はなく、企業によって対応が分かれています。一部の企業では、実習生の生活支援の一環として通信費を補助するケースもありますが、多くの場合、実習生が自己負担しています。

費用項目 概要 費用目安 企業の負担状況
携帯電話料金 通話・データ通信にかかる月額料金 3,000円〜5,000円/月 実習生が自己負担するケースが多い
インターネット利用料 住居でのインターネット接続費用 4,000円〜6,000円/月 実習生が自己負担するケースが多い

4-2.娯楽・文化活動費

実習生が日本での生活を充実させるためには、娯楽や文化活動への参加も重要です。これらの費用についても、企業が負担する義務はありませんが、実習生の生活満足度向上を目的として、一部の企業ではイベント費用の補助やチケットの提供を行っています。

費用項目 概要 費用目安 企業の負担状況
イベント参加費 地域の祭りや観光地への参加費用 1,000円〜5,000円/回 企業が一部負担するケースもある
文化体験費 茶道・書道などの体験教室の費用 2,000円〜3,000円/回 企業が一部負担するケースもある

4-3.医療費の自己負担分

実習生は健康保険に加入することで、医療費の一部を保険でカバーできますが、自己負担分(通常3割)は実習生が支払う必要があります。

企業がこの自己負担分を補助する義務はありませんが、実習生の経済的負担を軽減するために、企業が一部を補助するケースもあります。

費用項目 概要 費用目安 企業の負担状況
医療費自己負担分 診察・治療にかかる自己負担分 数千円〜数万円/回 企業が一部補助するケースもある

4-4.帰国時の手土産・贈答品費用

実習期間終了後、実習生が母国に帰国する際に、職場や関係者への手土産や贈答品を用意することがあります。これらの費用は実習生が自己負担するのが一般的ですが、企業が一部を補助することで、実習生の感謝の気持ちを表す手助けとなります。

費用項目 概要 費用目安 企業の負担状況
手土産・贈答品費用 帰国時に持参する贈り物の費用 5,000円〜1万円/人 企業が一部補助するケースもある

以上のように、企業が法的に負担を義務付けられていない費用であっても、実習生の生活環境や業務遂行に影響を及ぼすものがあります。これらの費用については、企業と実習生が事前に話し合い、負担の有無や割合を明確にすることが重要です。

5.まとめ

技能実習生の受け入れに際して、企業が負担すべき費用は多岐にわたります。法的に義務付けられている費用から、実習生との話し合いで決定すべき費用まで、明確な理解と適切な対応が求められます。

5-1.法的に企業が負担すべき費用

企業が法的に負担を義務付けられている主な費用は以下の通りです。

費用項目 概要 費用目安
入国前講習費 日本語や生活ルールの教育 約1.5万~4万円
入国後講習費 配属前の約1ヶ月間の講習 約6万~10万円
講習期間中の生活手当 講習期間中の生活費支給 約6万円
雇入れ時健康診断 労働安全衛生法に基づく健康診断 約1万円
帰国渡航費 実習終了後の帰国費用 約6万~10万円

5-2.企業が自主的に負担している費用

法的義務はないものの、多くの企業が実習生の生活支援やモチベーション向上を目的として負担している費用があります。

費用項目 概要 費用目安
技能検定試験受験料 技能習得度を評価する試験の受験料 約2万円
日本語能力試験受験料 日本語の習得度を評価する試験の受験料 約5,000円~6,000円
通勤費用補助 通勤にかかる交通費の補助 月額5,000円~1万円
作業服・安全靴の支給 業務で使用する作業服や安全靴の支給 約1万~2万円
生活用品の初期支援 生活開始時に必要な生活用品の提供 約2万~5万円

5-3.実習生との話し合いで負担を決めるべき費用

企業の負担が義務付けられていないが、実習生との話し合いで負担を決定すべき費用も存在します。

費用項目 概要 費用目安
通信費(携帯電話・インターネット) 通話・データ通信にかかる月額料金 月額3,000円~5,000円
娯楽・文化活動費 地域の祭りや観光地への参加費用 1,000円~5,000円/回
医療費の自己負担分 診察・治療にかかる自己負担分 数千円~数万円/回
帰国時の手土産・贈答品費用 帰国時に持参する贈り物の費用 約5,000円~1万円

5-4.費用負担に関する注意点

  • 事前の明確な取り決め:実習生との間で費用負担に関する取り決めを文書化し、トラブルを未然に防ぐことが重要です。
  • 助成金・補助金の活用:国や自治体が提供する助成金や補助金を活用することで、企業の負担を軽減できます。
  • 監理団体との連携:監理団体と密に連携し、制度の最新情報や適切な対応方法を共有することが求められます。

5-5.今後の展望

技能実習制度は、2027年に「育成就労制度」への移行が予定されており、企業の費用負担や実習生の待遇に関する見直しが進められています。企業は、制度の変更に柔軟に対応し、持続可能な人材育成と確保を目指すことが求められます。

今後、新しい法改正に対応していくことが重要です。

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