自動車整備業において技能実習生は活躍できるか?インドネシア人・ベトナム人を中心に解説

1.はじめに

自動車整備業界では近年、深刻な人手不足が問題となっています。少子化や若者の「車離れ」に伴い、自動車整備士志望者が減少し、平均年齢の高齢化も進んでいます。

その一方で、自動車の保有台数は増加傾向にあり、整備需要は拡大しています。こうした状況を受け、中小の整備工場では外国人技能実習生の受け入れに注目が集まっています。

特にベトナム人やインドネシア人の若い実習生たちは、高い意欲と真面目さで現場に貢献しており、人材不足解消の「救世主」として期待されています。

以下、自動車整備業に求められる人材像や技能実習生制度の役割、そして実習生(ベトナム・インドネシア出身者中心)の活躍可能性について、最新データを交えて詳しく解説します。

自動車整備業で求められるもの:スキル・人材像・課題

自動整備業で求められるスキル

自動車整備士は高度な専門技術職です。エンジンやブレーキといった 自動車の構造・機構に関する深い知識、的確な故障診断能力、そして分解・整備・組み立てといった 実践的スキル が求められます。

また近年はハイブリッド車や電気自動車などの 新技術 に対応するため、電子制御システムの診断スキルやITリテラシーも必要になっています。整備作業は安全と直結するため、注意深さ や 責任感、チームで作業する協調性も不可欠です。

人材不足の原因

現在、国内の若年層でこの道に進む人は減少傾向にあります。背景には、整備士の仕事が「きつい割に賃金が低い」というイメージや長時間労働の慣習があり、せっかく資格を取っても離職してしまう若手も少なくありません。

さらに業界全体の高齢化で ベテラン技術者の引退 が進む一方、後継者不足 に陥る整備工場も増えています。その結果、求人を出しても人が集まらず、多くの現場で「常に人手が足りない」状態が常態化しています。

自動車整備士の数は減少傾向にあります。例えば2013年時点で約34.3万人いた整備士が、2023年には約33.1万人と約1.2万人減少しました。

一方、求人倍率(有効求人倍率)は2022年度で4.5倍に達し、他職種と比べても極めて高水準です。つまり1人の求職者に対し約4.5件もの求人がある計算で、人材不足の深刻さを物語っています。

また、整備専門学校への入学者数も過去15年で半減(約12,000人→6,500人)し、整備士の平均年齢は46.7歳にまで上昇しています。

こうしたデータから、自動車整備業における人材難は構造的な問題となっていることが明らかです。

指標(自動車整備業界)数値・傾向
有効求人倍率(2022年度)4.5倍
整備専門学校の入学者(約15年で)12,000人 → 6,500人
整備士の平均年齢(2022年)46.7歳

上記のように人材の高齢化と若手不足が顕著であり、「即戦力」となる若い整備士の確保が業界全体の課題です。この解決策の一つとして注目されているのが、海外からの技能実習生受け入れによる人材補充です。次章では、この外国人技能実習生制度の仕組みと、自動車整備業界における役割について説明します。

3.外国人技能実習生の制度と役割:技能習得と労働力の両面

外国人技能実習制度は1993年(平成5年)に創設された制度で、開発途上国の若者を一定期間日本に受け入れ、OJT(実地訓練)を通じて技能・技術を伝えることを目的としています。もともとは国際貢献の色彩が強い制度ですが、2016年4月に自動車整備分野が新たに対象職種として追加されて以来、整備業界でも実習生の受け入れが本格化しました。

技能実習生は「研修生」の立場ですが、日本の受け入れ企業と雇用契約を結び、実際の労働現場で働きながら技能を習得します。制度上は第1号実習(1年目)・第2号実習(2~3年目)・第3号実習(4~5年目)という段階があり、各段階の終了時に技能検定試験があります。優良な受け入れ機関の場合、実習生は最長5年間の在留が可能です。また3年間の実習修了後には、より長期就労を目的とした在留資格である特定技能への移行も認められており、試験合格または2号修了をもって自動車整備分野の特定技能1号として就労継続するケースも多くあります。

このように技能実習制度は、技能習得の場であると同時に、受け入れ企業にとっては貴重な労働力を確保する手段にもなっています。特に自動車整備業では、実習生が実際の整備作業を通じて即戦力として活躍しつつ、日本の先進的な整備技術や職場の安全管理体制を学び取るという「双方にメリット」のある関係が築かれています。

制度の運用面では、監理団体と呼ばれる機関が送り出し国の団体と連携し、実習生の選抜・入国前講習・受け入れ後のサポートなどを行います。送り出される実習生たちは母国で基礎的な整備技術や日本語の研修を受けてから来日するため、基本的な素養と強い向上心を備えているのが特徴です。特にベトナムやインドネシアでは、国内の職業訓練校で自動車整備を学んだ若者が日本での技能実習を希望するケースが多く、日本の国家資格取得や高度な技術習得を目指して意欲的に取り組む傾向が見られます。

技能実習生受け入れによる効果として、企業側には計画的な人材確保と若年労働力の導入という利点があります。実習生は原則として転職が認められず決められた期間勤めるため、受け入れ中小企業にとっては慢性的な人手不足を一定期間安定的に補える存在です。しかも日本人社員と比べ若い実習生が多いため、職場に活気をもたらし、ベテラン社員の指導意欲を高めるといったプラスの効果も報告されています。次章では、こうした技能実習生が自動車整備業で活躍できる具体的な根拠を、最新データをもとに3つのポイントに分けて示します。

4.技能実習生が自動車整備業で活躍できる3つの根拠

1. 深刻な人手不足を補う即戦力となっている

第一の根拠は、技能実習生が不足する整備人材の穴を実際に埋め始めているという点です。前述のとおり整備士不足が深刻化する中、外国人実習生の受け入れは年々増加しています。国土交通省の調査によれば、2020年時点で自動車整備職種の技能実習生は約2,900人に上り、2023年末時点ではその数が4,381人に達しています。下のグラフは技能実習生数の推移を示したものです。

自動車整備分野の外国人技能実習生 在留者数の推移(2018年→2023年)

上記のように、わずか数年で実習生の数は飛躍的に増えました。技能実習制度で受け入れ可能になった2016年以降、2019年頃まで順調に受け入れ人数が拡大し、コロナ禍による一時的な減速を経て、2023年には過去最多を記録しています。特にベトナム人実習生の存在感が大きく、次いでフィリピン人やインドネシア人が続いています(後述)。実習生たちは各工場でオイル交換や点検整備、部品交換作業などに従事し、基礎的な業務を支えています。現場の声として「実習生が来てくれたおかげで、受け入れ拒否せざるを得なかった仕事を引き受けられるようになった」という報告もあり、人手不足の現場にとって実習生は欠かせない戦力となりつつあります。

さらに、技能実習修了後も特定技能などで継続就労するケースが増えている点も見逃せません。法務省の統計では、2023年末時点で自動車整備分野の特定技能外国人は2,519人にのぼり、1年半で約2倍に増加しました。これら特定技能者の多くは技能実習から移行した人材とみられ、制度をまたいで長期に活躍する外国人整備士が着実に増えているのです。人材プールの観点で、技能実習生は将来にわたり整備業界を支える戦力となる可能性を示しています。

2. ベトナム・インドネシアを中心とした優秀な若手人材

第二の根拠は、技能実習生として来日する外国人材の質や適性が高いことです。中でもベトナム人とインドネシア人は人数が多く、その活躍も顕著です。国土交通省の調査(令和2年)によれば、自動車整備職種の実習生の出身国はベトナムが約6割と圧倒的で、次いでフィリピン約2割、インドネシア約8%となっています。以下の表は主要国の内訳を示したものです。

出身国割合(自動車整備職種の技能実習生)
ベトナム58.2%
フィリピン19.4%
インドネシア7.6%
カンボジア4.1%
インド3.9%

ベトナム人・インドネシア人実習生が多く選ばれている背景には、母国での理工系人材の豊富さと勤勉な国民性があります。ベトナムでは若年人口が多く、自動車やオートバイの整備技能を持つ人材が数多く育っています。日本企業との経済的な結びつきも強く、技能実習を通じて日本の技術を学び祖国の発展に活かしたいという意欲的な若者が多いことが指摘されています。また、インドネシアも工業高等学校などで機械・自動車整備を学んだ卒業生が増えており、日本で経験を積むことに前向きな人材が増加しています。

受け入れ側の評価としても、これらの国の実習生は真面目で仕事熱心との声が圧倒的です。「言葉の壁はあるものの、指導した作業は確実に覚え、自分から進んで動いてくれる」「日本人社員と分け隔てなく接すれば、すぐ職場になじむ」という現場の証言も多く報告されています。実際、技能実習生のほとんどは20代前半~中盤の男性で(調査では20代が約9割)、体力的にもハードな整備作業に適応できる若さがあります。加えて母国で基礎訓練を積んできているため工具の扱いにも慣れており、吸収力の高さも特筆されます。「数ヶ月で日本人新人と遜色ない戦力になった」という受け入れ企業の声もあり、優秀な若手人材として期待に応えているのです。

こうした実習生の存在により、人手不足だった現場に新しい風が吹き込まれています。年長の整備士からは「若い実習生が頑張っている姿を見ると自分も刺激を受ける」という声も聞かれ、職場全体の士気向上につながった例もあります。ベトナム人・インドネシア人の実習生たちは、その勤勉さと向上心によって、日本の自動車整備現場で十分に活躍できる資質を備えていると言えるでしょう。

3. 企業からの高い評価と定着率の向上

第三の根拠は、技能実習生を受け入れた企業の満足度が高いことです。実際に外国人人材を採用した整備事業者に対する調査では、約7割以上の企業が「採用して良かった」と満足している結果が出ています。下の図表は、整備業界における外国人材採用満足度の内訳を示したものです。

外国人採用に対する満足度調査結果(自動車整備業界、n=100社)

ご覧のように、「満足」「やや満足」と回答した企業が合わせて71%にのぼり、実習生や特定技能者の戦力化に対して肯定的な評価が大半を占めています。一方、「どちらとも言えない」が21%、「やや不満」「不満」はごく一部(数%)に過ぎません。不満要因としては「言語や文化の違いによるコミュニケーションギャップ」や「住居費用の負担」などが挙げられていますが、多くの企業にとってはそうした懸念よりも得られるメリットの方が大きいことを示しています。

実習生受け入れのメリットとして企業が感じている点には、「安定した人材確保」「若手の活力注入」のほか、「外国人雇用を契機に社内の就業規則や安全管理を見直すことで労務環境が改善した」という声もあります。また、技能実習生が実習期間を終えた後、特定技能や技術者(技人国)ビザに切り替えて引き続き雇用するケースも増えており、人材の定着率向上につながっています。例えばベトナム人実習生が3年間の技能実習で技術と日本語を習得し、その後特定技能者として更に数年間勤務するといった例も珍しくなくなりました。このように、一度受け入れた外国人材を長期的な戦力に育て上げる流れができつつあることも、企業にとって大きな利点です。

外国人材採用に関する企業アンケート結果(満足度内訳)割合
満足28.0%
やや満足43.0%
どちらとも言えない21.0%
やや不満6.0%
無回答2.0%
※出典:フォーバル・日本自動車整備商工組合連合会調べ

上表のとおり、大多数の企業が外国人技能実習生・特定技能者の受け入れに満足しており、現場の即戦力として十分に活躍しうることを証明しています。また満足度の高さは、「外国人雇用に最初は不安があったが、実際は杞憂だった」という経営者の声を裏付けています。この結果から、技能実習生は単なる労働力以上に、職場に良い影響をもたらしつつ定着していることがわかります。実習期間終了後も戦力として残ってもらいたいと望む企業も多く、現に特定技能制度へのスムーズな移行など受け入れ側のサポート体制も整いつつあります。

以上3点より、自動車整備業において外国人技能実習生(ベトナム人・インドネシア人等)は十分に活躍できることがデータで裏付けられました。人手不足の解消、優秀な若手人材の投入、そして企業からの高評価という好循環が生まれており、技能実習生は整備業界に欠かせない存在になりつつあります。

5.自動車整備業と技能実習生の未来:人手不足解消の救世主となり得るか

深刻な人材難に直面する自動車整備業界において、外国人技能実習生は**「救世主」**ともいえる役割を果たし始めています。実習生や特定技能者として日本で経験を積んだ人材が増えることで、慢性的な整備士不足の緩和に寄与しているのは前述の通りです。国土交通省も2023年5月、「募集・定着・育成」の観点から人材確保策を取りまとめ、外国人材の受け入れ促進を柱の一つに据えました。これは官民挙げて外国人の力なしには業界の将来を支えられないとの危機感の表れと言えます。

今後を展望すると、技能実習生受け入れの環境はさらに改善・拡充される見込みです。2024年6月、日本政府は現行の技能実習制度を抜本的に見直し、新たな**「育成就労制度」**を創設する入管法改正を成立させました。この新制度では、技能実習と特定技能を統合する形で「人手不足分野における人材確保と人材育成」を目的に掲げており、より実態に即した形で外国人が日本で長期就労・スキル向上できるようになります。育成就労制度への移行により、優良な実習生であれば試験なしでさらなる在留延長が可能になるなどの措置が検討されています。これにより、これまで最大5年だった在留期間を超えて熟練人材として定着する道が開け、企業にとっても戦力を継続的に確保しやすくなるでしょう。

もちろん、外国人受け入れが万能というわけではなく、言語の壁や文化の違いへの配慮、適正な労働環境の整備は引き続き重要です。しかし前述したように、多くの実習生たちは熱意をもって仕事に取り組んでおり、受け入れ企業の評価も上々です。日本人だけでは賄いきれない現場を支える存在として、今後ますます外国人材への期待は高まっていくでしょう。

自動車整備業界における外国人技能実習生の活用は、単なる人手不足対策に留まらず、業界の新陳代謝を促し、国際化を進めるチャンスでもあります。ベテラン整備士の持つ匠の技を次世代(外国人含む)に伝承し、日本の高度な整備基準や「カイゼン」の精神を世界に広めていくという意義もあります。実習生たちが母国へ帰った後、日本で培った技術と経験を活かして活躍すれば、日本ブランドの信頼向上や国際貢献にもつながるでしょう。

総括すると、外国人技能実習生(特にベトナム・インドネシアの若者)は、自動車整備業界の人手不足を救う重要な戦力となり得ます。実際に多くの現場で彼らは欠かせない存在となっており、制度面の改革も追い風となっています。中小企業の経営者にとって、外国人実習生の受け入れは今や現実的かつ有効な選択肢です。適切な受け入れ体制と指導を整えることで、技能実習生は期待以上の成果を発揮してくれるでしょう。日本の自動車整備業の未来を担うパートナーとして、彼らの活躍にこれからも注目が集まります。長期的には、日本人と外国人が協働し合いながら支え合うことで、持続可能な整備人材の確保とサービス向上が実現すると期待されます。技術の国・日本の整備現場において、外国人技能実習生たちが真に「救世主」として輝く未来がすぐそこまで来ているのです。

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