ー 目次 ー
1.はじめに:自動車整備の技能実習生とは何か
近年、日本の自動車整備業界では深刻な人手不足が課題となっています。その解決策の一つとして注目されているのが、開発途上国から受け入れる技能実習生の自動車整備工です。
技能実習制度は1993年に創設され、2016年4月に自動車整備職種も対象職種に追加されました。この制度は、日本で培われた高度な整備技術や知識を実習生にOJT(現場研修)で伝え、帰国後に母国の発展に役立ててもらうことを目的としています。一方で、日本側にとっても若い整備人材を確保できる利点があり、国際貢献と人材確保を両立する仕組みです。
技能実習生(自動車整備職種)は、基本的に団体監理型で受け入れられます。これはインドネシアなど送り出し国の認定送出機関と、日本の受入監理団体(協同組合等)が連携して実習生を企業に派遣・監理する方式です。実習期間は第1号(入国後1年目)・第2号(2~3年目)・第3号(4~5年目)に区分され、最長5年間、日本の整備工場等で実習を積むことができます。
1年目修了時には技能検定3級相当、3年目修了時には2級相当の技能を身につけることが求められています。また実習生は渡日前に基礎的な日本語や専門知識を習得し、来日後すぐに約1か月の講習(法的保護講習等)を受けてから配属先での実務に入ります。
自動車整備職種は制度追加当初こそ受入数は少なかったものの、年々増加傾向が顕著です。法務省の統計によれば、2019年前後で約2,000人規模だった自動車整備分野の技能実習生は、2023年6月末時点で3,721人に達しています。わずか数年で受入総数がおよそ倍増したことになり、日本の整備現場において技能実習生が存在感を増していることが分かります。
では、実際にどの国から自動車整備実習生が来ているのでしょうか。技能実習生全体ではベトナムや中国出身者が多い傾向にありますが、自動車整備分野に限って見ると送出し国の構成に特徴があります。国土交通省が2019年に実施した電話調査によると、自動車整備職種の技能実習生の国別内訳はベトナムが約6割と最も多く、次いでフィリピン(約2割)、インドネシア(約8%)が上位を占めていました。
その他にもカンボジアやインド、ミャンマーなどからの受入れも一定数あります(図中「その他」に該当)。インドネシアは第3位とはいえ全体の1割未満でした。しかし近年インドネシアからの実習生は増加傾向にあり、2024年には自動車整備実習生全体の約18%がインドネシア人となるまで存在感を高めています。この背景には、後述するインドネシア側の送り出し体制強化と、日本側の受け入れニーズ拡大があります。
なお、技能実習生の多くは男性ですが、近年は女性の整備実習生も徐々に登場しつつあります(詳細は後述)。まずはインドネシアにおける送り出し機関での訓練について見てみましょう。
2.インドネシア送り出し機関での訓練内容と水準
インドネシアはベトナム、フィリピンに次ぐ技能実習生送り出し国であり、自動車整備分野でも人材供給に力を入れています。インドネシアには政府認定の送り出し機関(通称LPK)が多数存在し、日本への技能実習希望者に対する選抜・訓練を行っています。送り出し機関では、日本企業で即戦力として活躍できるよう、職種に特化した実践的な訓練プログラムが組まれています。
特に自動車整備の場合、エンジンやシャシーといった専門知識だけでなく、日本の職場で必要となる安全意識や整理整頓の習慣までも教育に取り入れているのが特徴です。
インドネシアの公的な職業訓練校にも自動車整備コースはありますが、その多くはわずか3か月間の短期課程に留まっています。そのため、送り出し機関側で追加の長期訓練を実施し、日本での実習に耐えうる技量を身に付けさせる必要があります。
例えば、自動車メーカーと連携して現地訓練校の講師を育成するJICAプロジェクト(2016~)では、インドネシア各地に日本式の整備教育カリキュラムを普及させる取り組みも進められています。送り出し機関ではこうした知見も取り入れつつ、最新の日本の整備基準に沿ったトレーニングを提供しています。
3.送り出し前の主な訓練内容(例)
インドネシアの送り出し機関で行われている主な自動車整備トレーニング内容の一例を、以下の表に示します。訓練期間は機関によって様々ですが、一般的に4~6か月程度の集中コースが設けられています。この間に日本語と専門技術の両面から指導が行われ、実習生候補は厳しいスケジュールで技能習得に励みます。
訓練項目 | 内容(例) |
日本語教育 | あいさつや日常会話から専門用語まで、日本語能力試験N4~N3レベルを目標に集中的指導。日本の文化・職場習慣も学習。 |
専門知識講義 | 自動車の基礎構造(エンジン、ブレーキ、電装系等)や工具の名称、整備基準などを座学で習得。 |
整備実習(実技) | 実際のエンジン分解・組立、タイヤ脱着、ブレーキ点検整備などを反復練習。日本から提供された中古車両や部品を使い、実物で技能を磨く。 |
安全衛生・規律 | 作業時の安全ルールや防護具の使用方法を徹底指導。5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)の実践や時間厳守など、職業人としての規律教育。 |
模擬車検演習 | 日本の車両法規に則った点検手順を模擬的に体験。チェックシートの使い方や報告書の書き方も訓練し、来日後の車検業務に備える。 |
表:インドネシア送出し機関における自動車整備技能実習生向け主な訓練内容(例)
このように送り出し機関では、言語・技能の両面で基礎を固め、「即戦力」として送り出すことを目標としています。実習生たちは毎日朝から晩まで厳しい訓練漬けの日々を過ごし、日本での就労・実習に必要な知識と体力・精神力を養います。特に日本語については、日本人講師や帰国実習生を招いて指導する機関も多く、「専門用語を含め現場で支障なくコミュニケーションできる」レベルを目指します。
また整備実習では、日本の整備工場で使われるツール(スパナ、トルクレンチ等)の使い方や計測単位(例えば日本のタイヤ圧はkPa表示など)にも慣れさせ、現場で戸惑わない工夫がされています。
送り出し機関によっては日本人OBが駐在し直接指導するケースや、自動車メーカー系列の教育センター(例:トヨタが支援する職業訓練校)で高度な実習設備を使えるケースもあります。
さらに、インドネシア政府も技能実習生の質向上に力を入れています。送り出し機関の認定制度を整備し、不適切な業者を排除するとともに、公的資金を投じた日本語教育センターの設立なども行われています。
こうした努力の結果、日本企業からの評価も高まり、インドネシア人実習生の受け入れ数は年々増加しています。例えばあるインドネシア送出し機関(LPKプリマ・ドゥタ・セジャティ)では、自動車整備分野の送り出し実績が2016年8名から2019年には120名へと飛躍的に伸びています。この数字からも、日本で働きたいと願うインドネシア人整備士志望者が近年急増していることが分かります。
教育を修了し渡航前研修(プレ出発オリエンテーション等)を終えた実習生たちは、いよいよ日本での活躍に向け旅立ちます。では、彼らは来日後どのように職場に適応し、どんな作業を任されるのでしょうか。
4.来日後の即戦力ぶり:車検作業に携われる理由と実態
インドネシアで十分な訓練を積んできた実習生は、日本到着後ほどなく現場配属されます。整備工場に配属されたばかりの技能実習生であっても、自動車の定期点検(車検)に関わる基本的な作業を任されるケースが少なくありません。その理由は、大きく分けて二つあります。
一つ目の理由は、実習生自身の基礎知識・技能レベルが高いことです。多くのインドネシア人実習生は母国で職業高校や専門学校の自動車科を卒業しており、エンジンやブレーキの基本構造については既に理解しています。
例えば、2024年に宮崎県の整備工場に受け入れられたインドネシア人実習生4名は、全員「インドネシアの高校で自動車整備を学んだ」経歴を持っていました。彼らは日本に来たばかりの時点でオイル交換やタイヤ点検程度なら一通りこなせる知識を備えていたのです。もっとも、「日本の道具ややり方は(インドネシアの学校で学んだものと)違う」ため戸惑いもあるようですが、新しい技術を吸収する意欲は高く、短期間で現場に順応していきます。
二つ目の理由は、送り出し機関での事前訓練が実務に直結していることです。前章で述べたように、インドネシアの訓練では日本式の車両点検手順を模擬体験しています。そのため、日本の整備工場で実際に車検整備を任された際も、流れを理解しやすいのです。
例えば、とある整備工場では、実習生に対し「最初のうちは車検整備の手順や基本的な工具の使い方を覚えてもらう」ことから始め、タイヤの取り外しやブレーキ周り・エンジンルームの点検を重点的に教えているといいます 。
これらは送り出し前に訓練生が経験してきた内容と重なる部分も多く、実習生にとって馴染みやすい作業です。その工場では、実習生が慣れてくると車検全体の作業の流れを把握し、自分で点検項目を進められるようになるといいます。
もちろん途中で日本人の整備主任者が確認・指導しますが、「そこまでの作業は早い段階で身につくはずです」と期待が語られています 。
実際、インドネシア人実習生たちの勤勉さや吸収力には日本人整備士からも高い評価の声が聞かれます。ある受け入れ企業の担当者は「教えたことを素直に守り、日々上達している。
1年経つ頃には日本人新人と遜色ない戦力になっている」という趣旨のコメントを残しています(企業ヒアリングより)。これは技能実習制度の枠組みで1年目終了時に実施される技能検定試験にも表れており、多くの実習生が入国後1年で自動車整備3級相当の試験に合格しています。
3級整備士は初歩レベルとはいえ、車検を含む基本的な点検・整備を単独でこなせる技能水準です。来日前の訓練と来日後のOJTを通じ、実習開始から1年程度でここまで到達できることは、実習生本人の努力はもちろん、受け入れ企業側の丁寧な指導の賜物と言えるでしょう。
もっとも、実習生が配属直後から何でも自由に任されるわけではありません。エンジン内部の大修理や高度な故障診断など、安全や品質に直結する重要作業は日本人ベテラン整備士が担当し、実習生は補助に回るのが普通です。例えばブレーキパッド交換作業では、実習生がパッドを取り外し点検するところまで行い、最終的な交換判断や締め付け確認を上長がダブルチェックする、といった役割分担がなされています。
また言語面でも、専門的な報告やお客様対応は日本人スタッフが担い、実習生は整備ピット内の作業に専念する体制が一般的です。こうした段階的なOJTによって、実習生は実務経験を積み重ね、着実に技能向上を図っています。
総じて、インドネシア人技能実習生は「真面目で熱心、のみ込みが早い」と多くの整備現場で評価されています。送り出し前の十分な準備と、来日後の周囲のサポートにより、短期間で日本の整備士として遜色ない働きを見せる例も増えてきました。
その一方で、日本の最新車種に対応した診断機器の操作や、日本独自の整備基準(例:保安基準による検査項目)には戸惑うこともあるため、受け入れ企業は定期的な勉強会を開くなどフォローにも努めています。実習生自身も「毎日新しいことを学べて楽しい」「早く一人前の整備士になりたい」と前向きで、技能向上への意欲は高く保たれています。
5.増える女性技能実習生・インドネシア人女性整備士の台頭
自動車整備職種の技能実習生は、開始当初から男性が圧倒的多数を占めてきました。2019年の調査では、自動車整備実習生1,937人中女性はわずか3人(0.2%)に過ぎませんでした。
しかしながら、近年この状況に変化の兆しが見え始めています。日本国内では自動車整備士全体に占める女性の割合が年々上昇傾向にあり、平成29年度(2017年)から令和3年度(2021年)の間で約2倍に増加しました。令和3年度末時点で女性整備士は約1万人に達し、全整備士の約3%を占めています 。
整備業界は従来「男性の職場」というイメージが強かったものの、最近では女性の活躍推進に向けた職場環境整備が進み、徐々に女性整備士が増えているのです。
この流れは外国人材の分野にも波及しています。送り出し国の一つであるインドネシアでも、女性の技能実習候補者が注目され始めています。インドネシア人は勤勉で手先が器用な国民性と言われ、細やかな気配りが求められる介護職種などでは多数の女性実習生が活躍してきました。
同様に自動車整備の分野でも、インドネシア国内で自動車好きな女性や工学系を専攻した女性が徐々に台頭しつつあります。送り出し機関によっては女性候補者の募集・訓練にも乗り出しており、「日本で整備士になりたい」という女性たちが訓練に励んでいる例も報告されています。
日本側でも女性外国人整備士の受け入れに前向きな企業が現れています。大阪のある自動車会社では2012年、女性だけの整備チームを立ち上げ、日本人とインドネシア人、中国人の計3名の女性整備士を採用しました。
インドネシア出身のウィネタ・アユニンカ・プトリさん(当時22歳)はそのメンバーに選ばれ、高校時代から培った整備技術と留学先の日本の短期大学で学んだ知識を武器に活躍しています。
プトリさんは入社時点で自動車整備士国家資格2級を取得済みで、将来は1級整備士や検査員資格も取得したいと意気込んでいます (インドネシア人が参加 日本の女性車両整備チーム SGモータース | じゃかるた新聞)。このように、日本でプロの整備士として活躍するインドネシア人女性も現れており、後輩の女性実習生たちの良きロールモデルとなっています。
2015年当時は男性実習生が1,934人だったのに対し、女性実習生は3人しかいませんでした。このように出発時点では女性は極めて少数ですが、日本と送り出し国双方の取り組みにより女性整備士志望者の参入ハードルは下がりつつあると言えます。例えば日本政府は2017年に「自動車整備業における女性が働きやすい職場環境づくりガイドライン」を策定し、設備や風土面での改善を促しました(更衣室の整備、力仕事時の補助具導入等)。送り出し側でも「女性でも活躍できる職種」として自動車整備をPRする動きが出ています。インドネシアの工科大学では女子学生に奨学金を出す企業も現れており、将来的には女性実習生の数も増加していく見通しです。
もっとも、現時点では自動車整備分野の外国人実習生に占める女性の比率はごく僅かであり、受け入れ現場でも試行錯誤が続いています。工具の重量や力仕事の負担を考慮しつつ、女性が働きやすいよう職場環境を整える必要があります。例えば重いタイヤの持ち運びにはリフトを活用する、体格に合った作業着や用具を支給する、といった配慮が求められるでしょう。文化の違いにも注意が必要です。
インドネシア人女性はイスラム教徒が多く、肌の露出や男性との同室を避けたい場合があります。そのため、更衣室や寮のプライバシー確保、ハラル(イスラム法に適合した)食の提供など、多文化共生の観点で細やかな対応が大切です。企業と実習生、双方の歩み寄りによって、女性整備士が安心して力を発揮できる環境が整えば、今後ますます多様な人材が整備業界を支えてくれることでしょう。
6.技能実習制度と整備分野の将来展望
自動車整備業界では少子化や若者の車離れの影響で国内人材の確保が難しくなっており、外国人技能実習生や特定技能人材への期待が高まっています。実際、国家資格整備士の登録者数はこの10年で約1.2万人減少し、整備士の平均年齢は45歳超と高齢化が進んでいます。
このままでは将来的な人手不足が避けられないとの危機感から、業界全体で外国人材の受け入れを積極化しています。先述のように、2023年時点で技能実習生は約3,700人が整備現場で働いていますが、さらに長期就労が可能な在留資格「特定技能」での受け入れも拡大しています。
特定技能制度は2019年に開始された比較的新しい在留資格制度で、人手不足が深刻な産業分野に一定の試験合格者を受け入れるものです。自動車整備分野も特定技能の対象となっており、技能実習2号を修了した者は試験免除で特定技能1号に移行できます。
特定技能1号では通算5年間の就労が認められ、技能実習の延長線上で継続雇用するケースが増えてきました。実際、令和5年6月末時点で自動車整備分野の特定技能1号外国人は2,210人に上り(主要国:ベトナム1,048人、フィリピン719人、インドネシア194人等)、技能実習生と合わせて約6,000人弱の外国人整備士候補が日本で働いている計算になります。
これは自動車整備要員全体(約40万人)の1.5%程度に当たりますが、今後さらに比率が高まることが予想されています。下表は2023年6月末時点での技能実習と特定技能の受け入れ人数をまとめたものです。
在留資格 | 自動車整備分野の外国人数(2023年6月末時点) |
技能実習(自動車整備職種) | 3,721人 |
特定技能(自動車整備分野) | 2,210人 |
表:2023年時点における自動車整備分野の外国人受け入れ状況(技能実習 vs 特定技能)
特定技能については、さらに上位の特定技能2号への移行も視野に入っています。特定技能2号になると在留期間の上限がなくなり、熟練技術者として長期にわたり日本で就労できるようになります。2023年6月に日本政府は、自動車整備分野を含む9分野を特定技能2号の対象に追加する方針を決定しました。
これにより、優秀な技能実習修了者が特定技能2号へステップアップし、将来的には家族帯同や永住も可能となる道が開けました。例えばインドネシア人実習生が5年の技能実習と特定技能1号を経て2号に移行すれば、日本で腰を据えてキャリアを積み、いずれ自国と日本を繋ぐ橋渡し的な存在になることも期待できます。
JICAなども、このような人材育成と循環を支援するための取り組みを進めており、企業向け・実習生向けの教材開発や帰国後の就職支援にも乗り出しています (自動車整備 × 技能実習生等 外国人材のための学習教材が増えています! | 日本国内での取り組み – JICA)。
一方で、技能実習制度そのものも見直しの時期を迎えています。日本政府の有識者会議は2023年、「技能実習制度を廃止し、新たな在留制度へ移行すべき」との提言を行いました。現在の技能実習制度は国際貢献が建前でありながら実態は労働力確保になっているとの批判があるためです。
その代替として、より労働力受け入れを正面に据えた「特定技能」への一本化や、企業が直接海外人材を育成・雇用できる新制度(育成就労制度)の創設が検討されています。2030年までに技能実習制度を段階的に解消し、実習生も特定技能などに移行していく見通しです。
このように制度改革の動きはありますが、日本の自動車整備現場における外国人材の重要性は今後ますます高まると考えられます。熟練の日本人整備士が減少する中、若く意欲的なインドネシア人をはじめとする実習生・特定技能人材は、なくてはならない戦力となりつつあります。
日本側も彼らが働きやすい職場づくりや能力を最大限発揮できる教育体制を整えることが求められるでしょう。そのためには、言語・生活支援、日本人スタッフの多文化理解研修、技能検定試験の整備(多言語化)など、受け入れ環境を一層充実させていく必要があります。
幸い、自動車整備分野では企業や団体による自主的な取り組みも進んでいます。例えば業界団体は外国人向けの技術研修会を開催し、技能試験対策の教材を提供しています (自動車整備 × 技能実習生等 外国人材のための学習教材が増えています! | 日本国内での取り組み – JICA)。
また、帰国した実習生が母国で日系企業のサービス拠点で働いたり、自動車整備工場を起業したりする事例も出てきました。こうした国際的な人材循環は、日本とインドネシア双方にとって有益であり、整備分野の発展に寄与します。技能実習生として日本で経験を積んだインドネシア人整備士が将来母国で後進を育成し、再び日本へ優秀な実習生を送り出す——そんな好循環も生まれ始めています。
7.おわりに
本稿では、インドネシア出身の自動車整備技能実習生に焦点を当て、その送り出し機関での訓練内容、日本での活躍ぶり、そして将来の展望について解説しました。技能実習制度は課題も指摘されていますが、現場レベルでは実習生たちが日本の整備技術を懸命に学び、確かな戦力として貢献している実態があります。
インドネシアの送り出し機関の徹底した人材育成、日本側の受け入れ努力、そして実習生本人の向上心が三位一体となり、国境を越えた技術継承が実現しているのです。
自動車整備は人々の安全を支える重要な仕事です。その現場で、多様な背景を持つ技能実習生たちが汗を流し、日本人整備士とともに車両を整備する光景は、国際協力のあるべき姿の一つかもしれません。
今後、制度改革による変化はあっても、インドネシアをはじめとする海外からの人材が日本の整備業界を支えていく構図は続くでしょう。技能実習生として来日した彼ら・彼女らが経験を積み、やがて熟練技術者として双方の架け橋となって活躍する未来に期待が高まります。
日本とインドネシアの協力関係は年々強化されており、自動車整備分野における人材交流もその一端を担っています。「学びたい」「力になりたい」という実習生たちの思いと、「ようこそ、日本へ」という受け入れ側の思いが合わさって、これからも数多くの物語が生まれていくことでしょう。技能実習生の挑戦と成長は続きます。その歩みが両国の発展と相互理解に繋がっていくことを願いつつ、本稿の結びといたします。
References:
- 【17】国土交通省 自動車整備分野における人材確保に係る取組(外国人材受入状況等) (2024年9月18日閲覧)
- 【25】出入国在留管理庁「職種・作業別 在留資格『技能実習』に係る在留者数(令和5年6月末現在)」(2023)
- 【27】国土交通省「自動車整備職種における外国人技能実習生に関する電話調査報告」(2019年度)
- 【23】有限会社マルエイ自動車「外国人技能実習生の仕事内容」(求人情報ページ) (2021)
- 【4】MRT宮崎放送 (NewsDig)「一人前の整備士を目指して宮崎交通へ インドネシアからやってきた4人の技能実習生に密着」(2024年3月1日)
- 【31】じゃかるた新聞「インドネシア人が参加 日本の女性車両整備チーム SGモータース」(2012年5月23日)
- 【5】さむらい行政書士法人「インドネシア人技能実習生の特徴や性格、雇用のポイント」(2023年) (特徴の解説ページ)
- 【32】株式会社カミナシ「2030年までに廃止される技能実習制度。新制度(育成就労制度)に移行予定」(2023年 提言内容解説ページ)

外国人整備士ブログのWeb制作、編集をしています。
技能実習生や自動車整備士成に関連したお役立ち情報、最新情報などを発信していきます。