中小企業が直面している大きな課題のひとつに「人手不足」があります。特に製造業や建設業、農業などの現場では、日本人だけで必要な人材を確保するのが難しくなってきています。そこで注目されているのが、外国人技能実習生の受け入れ制度です。
この制度を円滑に運営するために欠かせないのが「監理団体」です。しかし、「監理団体って何?」「どんな役割があるの?」「うまく付き合うにはどうすればいいの?」という疑問を持っている経営者も多いでしょう。
本記事では、監理団体の基本から、実際にあったトラブル事例、上手な活用法までをやさしく解説します。外国人雇用を成功させ、経営の安定につなげるためのヒントとしてご活用ください。
① 監理団体とは?
監理団体とは、外国人技能実習制度において、実習生を受け入れる企業(受け入れ企業)を支援し、適切に制度を運用するための「橋渡し役」を担う団体です。具体的には、実習生がきちんと働ける環境を整え、制度の趣旨に沿った実習が行われているかをチェックする役割を持っています。
技能実習制度は、「外国人労働者を安く使う」ための制度ではなく、「日本の技術や知識を外国に伝える」という国際貢献の目的があります。そのため、実習の質を保ち、不適切な労働環境が生まれないようにする必要があるのです。
この重要な管理・監督を担うのが、監理団体です。
② 監理団体の役割・業務内容
● 役割
監理団体の主な役割は以下の3つです。
- 受け入れ企業の支援・指導
- 技能実習生の保護・相談対応
- 制度の適正な運用の監査
● 業務内容(具体的な業務)
以下は、監理団体が日常的に行っている主な業務を箇条書きで整理したものです。
- 受け入れ企業への定期訪問・指導
月1回以上の訪問で、労働環境や実習内容が適正か確認。賃金や労働時間、住環境などをチェックし、必要に応じて改善指導。 - 技能実習計画の作成支援
企業と協力して実習内容や評価項目を記載した計画書を作成。外国人技能実習機構(OTIT)への申請手続きもサポート。 - 書類提出・更新手続きのサポート
在留資格認定や変更に必要な書類の作成支援。実習中の報告書や更新申請の代行・補助も実施。 - 実習生への講習実施(入国前・入国後)
入国前講習では日本語や文化、生活マナーを指導。入国後講習では労働基準法、安全衛生、緊急時の対応などを教育。 - 相談対応・通訳の手配
実習生向けに母国語対応の相談窓口を設置。企業との意思疎通のための通訳・翻訳サポートも提供。 - 監査・不正防止活動
年1回以上の監査を実施し、制度違反の有無を調査。問題があれば是正指導を行い、必要に応じて行政機関に報告。 - トラブル時の仲介・解決支援
賃金未払い、パワハラ、失踪などのトラブルに対応。中立的な立場で迅速な解決を支援。
③ 監理団体の種類・数
監理団体には、主に以下のような組織が存在します。
- 商工会・業界団体などの公益法人
- 中小企業が共同で設立した協同組合
- 農協や漁協などの協同組織
- 社会福祉法人
監理団体として活動するには、「一般監理団体」として外国人技能実習機構(OTIT)に認定される必要があります。2024年時点で、全国に約2,900の一般監理団体が登録されています。
なお、優れた実績と体制を持つ監理団体は「優良監理団体」として認定され、受け入れ人数の上限が緩和されるなどのメリットもあります。
④ 監理団体と企業の間に起こった実際のトラブル7選
技能実習制度は、監理団体・受け入れ企業・実習生の三者が適切に連携しなければ、さまざまなトラブルに発展します。ここでは、企業側の負担や信頼性に関わる、監理団体との典型的なトラブル事例を7つ紹介します。
- 1. 監理団体の指導が形式的で問題が放置される
実習生の賃金が最低賃金を下回っていたにもかかわらず、監理団体の定期訪問ではスルーされていました。のちに労働基準監督署から是正勧告が入り、企業は未払い分の賃金支払いや過去の帳簿提出を求められ、大きな事務負担と経済的損失を被りました。 - 2. 月額費用が不透明で予想外のコストに
監理団体から、内訳の説明がないまま毎月数万円を請求されていたが、他社比較により相場より高額だと判明。契約前にサービスと費用の内容を明確にすることが重要です。 - 3. 通訳の質が低く、実習生との意思疎通が困難に
安全教育の説明が通訳者に正確に伝わらず、実習生が誤った機械操作で軽傷。適切な通訳・翻訳体制の整備が求められます。 - 4. 書類対応の遅れで入国や更新がストップ
監理団体の事務ミスで在留資格更新の書類が遅れ、実習生が一時帰国。企業の生産スケジュールにも悪影響が出ました。 - 5. 過剰な監査が業務に支障をきたす
タイムカードの数分のずれをめぐり是正報告を要求されるなど、過度な指導が現場を疲弊させるケースも。適正なバランスが必要です。 - 6. トラブル時の対応が遅く、実習生が失踪
人間関係のトラブルを相談していた実習生が、監理団体の対応の遅れにより失踪。企業側にも行政対応が求められました。 - 7. 技能実習計画に現実とのギャップがあり制度違反に
実習内容と計画の不一致が発覚し、「単純労働」と判断されて受け入れ停止に。計画段階から現場との調整が不可欠です。
⑤ 監理団体を上手く活用する方法
● 信頼できる監理団体を選ぶ
- 優良監理団体に認定されているか確認
- 実績・口コミ・他社の紹介を参考に
- サポート内容・費用を事前に明示してもらう
● 定期的な情報共有を欠かさない
- 月1回の訪問時だけでなく、困ったときはすぐに相談する
- 実習生の様子を積極的にフィードバックすることで、監理団体側も支援しやすくなる
● トラブルは早期解決がカギ
- 小さな問題でも放置せず、すぐに共有
- 双方で改善策を話し合うことが重要
まとめ
監理団体は、外国人技能実習制度を運用する上で欠かせない存在です。うまく活用すれば、実習生との信頼関係を築きながら、人手不足の解消にもつながります。
一方で、監理団体の選び方や付き合い方を間違えると、企業にとって大きな負担になることもあります。しっかりと信頼できる団体を見極め、積極的なコミュニケーションを図ることが、成功のカギです。

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