中小企業では人手不足が大きな課題です。特に製造業、建設業、介護業界では、日本人だけでは必要な人数を確保できず、外国人技能実習生の力を借りている企業も多いでしょう。
しかし、技能実習制度には「原則最長5年」という在留期間の制限があります。実習が終了すると、せっかく育てた人材が帰国してしまい、また一から人材を探さなくてはならなくなります。
そこで注目されているのが、「技能実習生を直接雇用へ切り替える方法」です。この記事では、以下の2つの方法をわかりやすく解説します。
- 方法①:特定技能制度への移行
- 方法②:在留資格「技術・人文知識・国際業務」などへの切り替え
ー 目次 ー
1.技能実習生とは?簡単におさらい
技能実習制度の目的
技能実習制度は、発展途上国の人材に日本の技術を学んでもらい、母国の発展に役立ててもらうことを目的としています。そのため、原則として「実習期間が終わったら帰国する」ことが前提です。
- 在留期間は1年、3年、最長5年(職種によって異なる)
- 約80職種が対象(農業、建設、介護、食品加工など)
制限と課題
- 転職できない
- 職種が限定されている
- 人権侵害の事例もあり、制度の見直しが進行中(出典:法務省「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議 報告書」)
2.方法① 特定技能制度に切り替える
特定技能とは?
特定技能は、2019年に始まった新しい制度で、深刻な人手不足の分野において外国人が「即戦力」として働くことを目的としています。
- 特定技能1号:在留期間は最大5年、転職も可能
- 特定技能2号:熟練レベルの人材が対象、在留期間の制限なし、家族帯同も可能
切り替えの条件
技能実習2号を修了した外国人は、原則として「特定技能1号」に無試験で移行することができます(ただし、職種が一致している必要あり)。
例➀ 食品製造の実習生 → 特定技能「外食」または「飲食料品製造」
例➁ 建設の実習生 → 特定技能「建設」
手続きの流れ(概要)
- 技能実習を終了(または途中で転換)
- 特定技能の在留資格変更許可申請(出入国在留管理庁)
- 雇用契約の締結
- 支援計画の提出(登録支援機関を通すか自社で行う)
メリット
- 育てた実習生を引き続き雇用できる
- 日本語力や技術力が高く、即戦力
- 最大5年間の在留が可能
注意点
- 支援体制の整備が必要(生活面・職場環境など)
- 職種の範囲が限られる(12分野のみ)
- 特定技能2号への移行はまだ限定的
3.方法②「技術・人文知識・国際業務」などへ切り替える
どんな人が対象になる?
- 技術職(設計、プログラミングなど)
- 人文系職(経理、総務、翻訳など)
- 国際業務(海外取引、語学サポートなど)
切り替えに必要な条件
- 大学または専門学校を卒業している
- 日本語能力試験N2以上が望ましい
- 業務内容と学歴・職歴の関連性があること
メリット
- 長期雇用が可能(更新制)
- 職種の幅が広い
- キャリアアップの可能性がある
注意点
- 学歴・職歴の確認が厳密
- 職種が単純労働とみなされると認められない
4.どちらの方法が自社に合っているか判断するポイント
①現場作業中心の職場 → 特定技能がおすすめ
- 製造業、農業、建設業、介護など
- 技能実習と同じ職種で継続したい場合
- 即戦力が必要で、すぐにでも働いてほしい
②デスクワーク中心や専門職 → 技術・人文知識・国際業務がおすすめ
- 通訳、経理、設計、貿易事務など
- 大卒または専門卒の人材を活用したい
- 長期的に正社員として育てたい
③実習生本人の希望も考慮しよう
切り替えには企業側の準備だけでなく、実習生本人の意欲や希望も大切です。長く日本で働きたいかどうか、日本語力はどのくらいあるか、将来のビジョンはあるかなど、面談を通じてしっかり確認しましょう。
5.直接雇用に切り替えるための準備と注意点
書類の準備
- 在留資格変更許可申請書
- 雇用契約書(仕事内容・賃金明記)
- 企業情報(登記簿謄本、決算書など)
- 支援計画書(特定技能の場合)
就業規則や職場環境の見直し
技能実習と違い、特定技能や技術系在留資格では「一般の労働者」としての扱いになります。労働条件や福利厚生に不備がないよう、就業規則を整えることも必要です。
社内理解の促進
多言語対応マニュアルや日本語学習支援などを活用し、職場全体で外国人材の受け入れ体制を整えましょう。
まとめ:人材確保と経営の安定化に向けて
技能実習生を直接雇用に切り替えることは、単なる制度上の手続きではなく、中小企業にとって大きな経営戦略の一つです。
特定技能制度は即戦力としての継続雇用が可能であり、「技術・人文知識・国際業務」などの在留資格では専門人材の育成につながります。
制度を正しく理解し、計画的に準備を進めることで、外国人材とともに持続可能な経営を実現していきましょう。
参考資料・出典
- 出入国在留管理庁「特定技能制度の概要」
- 法務省「在留資格変更許可申請」
- 技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議 報告書
- 厚生労働省「外国人雇用状況の届出状況」

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