技能実習生を受け入れる企業のメリット5選

採用

1.技能実習生とは

技能実習制度の目的と歴史: 技能実習制度は1993年に創設され、日本で培われた技能・技術・知識を開発途上国の人材に修得させることで、母国の経済発展を担う「人づくり」に寄与する国際協力を目的としています。

労働力不足の穴埋めではなく、人材育成による国際貢献を基本理念としており、制度開始から一貫してその趣旨が掲げられています(技能実習法第3条で「労働力の需給の調整の手段として行われてはならない」と明記) 。

2017年11月には技能実習法が施行され、技能実習生の保護や受入れ機関の管理強化を図った新制度へと改正されました。制度開始当初は研修生として1年間受入れ、その後1年の就労(技能実習)という形でしたが、現在では最長5年間の在留が可能となり(技能実習1号~3号の段階制)、受入れ可能職種も大幅に拡大しています。

2020年代に入り制度見直しの議論も活発化し、2023年には政府有識者会議が技能実習制度の廃止と新たな「育成就労制度」創設を提言しました。今後制度の形は変わる可能性がありますが、日本の国際人材育成という根幹理念は維持される見込みです。

対象業種と技能範囲: 技能実習制度で受入れ可能な業種・職種は年々拡大しており、農業、漁業、建設、食品製造、繊維・衣服、機械・金属加工、その他製造業分野など多岐にわたります。例えば建設関係では大工・とび・配管・溶接など、食品製造関係では水産加工・食肉処理・パン製造などが対象です。2019年時点で約80職種・140作業でしたが、その後介護や宿泊業等も加わり、2023年現在では約91職種168作業に及びます ()。受入れには職種ごとに定められた試験や要件を満たす必要があり、技能実習2号・3号へ移行できる「移行対象職種」は限定されていますが、カバーする産業領域は日本の人手不足が深刻な分野を中心に幅広く設定されています。技能実習生は入国後1~2か月の講習(日本語や法的保護に関する教育)を受けたのち、各企業でOJTを通じて技能習得に従事します。

技能実習生の規模と傾向: 現在、日本に在留する技能実習生は数万人規模から数十万人規模へ急増しています。厚生労働省の集計によると2022年10月末時点で技能実習生は343,254人に上り、日本で働く在留資格の中で最も多い人数を占めました。

在留外国人全体に占める割合でも技能実習生は13.1%と永住者に次ぐ規模となっており、外国人労働力の中核的存在になっています。また技能実習生の出身国はアジア新興国が中心です。ベトナムが最も多く全体の半数以上(約18万人)を占め、次いでインドネシア(約4.3万人)、中国(約4万人)が続きます 。

かつて最多だった中国からの実習生は近年減少し、それに代わって賃金格差の大きいベトナムやインドネシアからの受入れが急増しました。さらにフィリピンやミャンマー、カンボジア、タイなども主要送り出し国となっており、日本国内の実習生コミュニティは多国籍化しています。

上図のように技能実習生の多くは東南アジアを中心とした国から来日しており、日本で経験を積んだ後は原則として帰国する建前です。技能実習生は滞在中、日本人では充足が難しい職場で働きながら技能を習得し、帰国後は学んだ技能で母国の発展に寄与することが期待されています。一方実態としては、日本国内の人手不足を補う労働力として不可欠な存在になっているのが現状です。

技能実習制度は日本の労働市場と深く関わっており、その規模や構成には国内景気や送り出し国の経済状況が反映されています。例えば2000年代は中国人実習生が多数を占めましたが、中国の賃金上昇に伴い2010年代後半からはベトナム人実習生が急増しました。

コロナ禍の2020~2021年には一時実習生数が減少しましたが、入国制限緩和後の2022年以降は再び増加に転じています。下図は新規入国した技能実習1号の国籍別推移を示したもので、近年ベトナムからの受入れが著しく伸びていることが分かります。

以上のように、技能実習制度は「国際協力による人材育成」を掲げつつ、実際には日本の産業現場を支える外国人労働力の受入れ枠として機能してきました。特に人口減少と高齢化が進む2000年代後半以降、その役割は年々大きくなっています。技能実習生の多くは日本人若年労働者が不足する現場で活躍しており、日本の企業にとってなくてはならない存在となっているのです。

なお、2024年以降は現行の技能実習制度を発展解消し、新たな在留制度へ移行する方向で政府検討が進んでいます。

しかし制度の根幹である「発展途上国への技能移転」と「外国人受入れによる労働力確保」の二面性は今後も維持されると見られており、企業が外国人技能実習生を受け入れるメリットも引き続き大きいと考えられます。以下では、受入企業側の具体的な役割や手続き、そしてメリットについて詳しく解説します。

2.受入企業の役割

技能実習生を受け入れる企業(実習実施者)には、単なる労働力の受入れ以上に様々な責務が課されています。まず技能実習計画の作成・認定が必要です。企業は受け入れる予定の技能実習生ごとに詳細な実習計画書を作成し、公益財団法人・外国人技能実習機構(OTIT)からその認定を受けなければなりません。計画には習得させる技能内容や実習スケジュール、指導体制などを明記し、技能等級試験への合格や段階的な技能向上目標も盛り込む必要があります。認定を受けた計画に基づき実習を適正に実施しなければならず、計画外の作業に従事させることは禁じられています。

また受入企業は実習生の待遇や労働環境について法令基準を遵守する義務があります。技能実習生も労働者として労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法など日本の労働関連法規が全面的に適用されます 。

そのため受入企業は日本人労働者と同等以上の労働条件を確保し、適切な賃金支払い・労働時間管理・安全管理を行わねばなりません。サービス残業や最低賃金割れ等の違法行為があれば、技能実習計画の取り消しや受入れ停止といった処分につながります。実習生の社会保険加入も当然必要です。

さらに受入企業は実習生ごとに技能実習責任者や指導員を選任し、日常的な技術指導・教育を担当させる義務もあります。技能実習責任者は所定の講習(養成講習)を受講する必要があり、企業内の受入れ体制整備が求められます。

受入企業の多くは、中小企業等で組織される**監理団体(事業協同組合や商工会等)**を通じて実習生を受け入れています(後述の「団体監理型」)。その場合、受入企業は監理団体から定期的な監査・指導を受ける立場となります。監理団体は3か月に1回以上企業訪問し、実習が適切に行われているか、法令違反がないかをチェックします。

受入企業はこの監査に協力し、指摘事項があれば改善を図る責任があります。また実習生からの相談や苦情に対応する体制も企業側で用意するか、監理団体と連携して解決に当たります。言語や文化の違いから来るコミュニケーション上の不安を和らげ、実習生が安心して働ける環境を整えることも受入企業の重要な役割です。

具体的には、作業マニュアルの多言語化、現場での指導担当者による丁寧なサポート、生活面での支援(住居の確保や日本語学習の場の提供など)に努めている企業もあります。実習生が失踪などの問題を起こさず能力を発揮してくれるかどうかは、受入企業側の管理体制やサポート次第と言っても過言ではありません。

要約すると、技能実習生を受け入れる企業の役割は**(1)適正な実習計画の策定と実施、(2)法令順守と労働環境の確保、(3)技能指導・教育と生活支援、(4)監理団体等との連携による実習生保護**に集約されます。これらを確実に履行することで初めて、「技能実習」という名のもとに外国人を受け入れる意義が果たされ、企業側もメリットを享受できるのです。

3.受入企業になるまでの流れ

では、企業が実際に技能実習生を受け入れるにはどのような手順を踏む必要があるのでしょうか。その基本的な受入れまでの流れは以下の通りです(一般的な団体監理型の場合):

  1. 監理団体への申込み: 技能実習生を受け入れたい企業は、まず業界の監理団体(協同組合など営利を目的としない機関)に対し、受入れ希望人数や希望時期・職種などを申し込みます。監理団体は企業からの委託を受け、海外の送り出し機関と連絡を取り合います。
  2. 候補者の選考・雇用契約: 送り出し国側の政府認可送り出し機関が日本での受入れ条件に合う候補者を募集・選抜します。面接や技能テスト等で実習生候補が決定したら、受入企業と技能実習生との間で雇用契約を締結します。契約内容は日本の労働基準法に則ったもので、日本人従業員と同等の報酬(地域の最低賃金以上)が保証されます。
  3. 技能実習計画の認定申請: 受入企業は具体的な実習計画書を作成し、監理団体の支援を受けながら外国人技能実習機構(OTIT)に計画認定を申請します。OTITによる審査で実習内容や企業体制が適切と認められれば計画が認定されます(不適切な場合は差し戻しや不認定)。
  4. 在留資格の申請・入国: 技能実習計画の認定後、受入企業(または代理の監理団体)は出入国在留管理庁に在留資格「技能実習」の交付申請を行います。在留資格認定証明書が発行されれば、送り出し国の日本大使館で査証(ビザ)手続きを経て、技能実習生が来日します。入国後は監理団体による講習を経て、企業での実習が開始されます。

以上が受入れ開始までの大まかなプロセスです。申し込みから入国まで通常半年程度を要し、計画認定やビザ発給など各段階での手続きが必要になります。企業単独で海外支社等から受け入れる企業単独型の場合は、送り出し機関との調整や人選もすべて企業自身で行い、監理団体を経由せずに直接技能実習計画を申請します(この方式は大企業で海外現地法人を持つケースなどに限定されています)。いずれの方式でも受入れ企業は事前に周到な準備が求められ、計画認定やビザ取得には公的審査が入るため、計画性とコンプライアンスが重要です。

受入人数の枠: 加えて、企業ごとに受け入れ可能な技能実習生の人数には上限枠が定められています。常勤職員数に応じて基本人数枠が決まっており、例えば従業員30人以下の企業では実習生は3人まで受入れ可能です。

従業員数が多くなるほど受入枠も拡大し、最大で「常勤職員の1/20」に相当する人数まで受け入れられます。なお技能実習2号移行後はこの基本枠の2倍まで、3号まで進めば最大3倍(優良認定企業ならさらに拡大)まで同時受入れ可能人数が増える仕組みです。

このように、中小企業であれば数名規模、多くても十数名までが一度に受け入れ可能な上限です。基本人数枠を超える受入れはできず、実習生が段階を進んだ枠の空きを利用して新たな実習生を追加する形になります。また介護分野など職種によっては別枠基準がある点にも注意が必要です。適正な人数内で無理なく受け入れ、計画に沿って着実に技能を習得させることが企業の責務となります。

4.受入企業のメリット

技能実習生の受け入れには手続きや責任が伴いますが、その分受入企業にとっても多くのメリットがあります。日本国内での人手不足が深刻化する中、外国人技能実習生の活用は企業経営や職場環境に大きなプラス効果をもたらしています。ここでは主なメリットを、人材確保、コスト面、社内活性化、国際化という観点で解説します。

人材確保による労働力不足の解消

最大のメリットは、慢性的な人手不足の緩和です。少子高齢化により建設業や農業、製造業など多くの業界で若い労働力が不足しています。技能実習制度はそうした業種に限定して外国人の受入れを認めているため、必要な現場に必要な人材を確保する手段となっています。例えば建設業では若年層の入職者減少が著しく、「将来の担い手が不足しているため若年層中心の外国人技能実習生の採用に積極的」と分析されています。

実際、2021年度に認定された技能実習計画を職種別に見ると建設関係が全体の20.8%で最も多く、次いで食品製造関係19.5%、機械・金属関係14.9%と続いており、人手不足が顕著な産業で技能実習生が活躍していることが分かります。特に地方の農業分野や介護分野でも、日本人だけでは賄えないマンパワーを外国人実習生が補い、事業の継続に貢献しているケースが増えています。実習生を受け入れることで必要な時に必要な人数の労働力を確保でき、生産ラインの停滞やサービス提供停止を回避できるのは企業にとって大きな利点です。

さらに、技能実習生として一定期間経験を積んだ人材は、制度終了後に新設の在留資格「特定技能」へ移行して引き続き就労する道も開かれています。実習で基礎を身につけた人材を特定技能1号・2号として長期戦力化できれば、人手不足解消により一層寄与します。

建設業の例では、技能実習から特定技能へ資格変更し継続雇用している企業もあり、せっかく育てた人材を使い捨てにせずに済むようになっています。このように技能実習生の受入れは、将来的な外国人労働者の確保・育成につながる人材パイプライン構築の面でも意義があると言えます。

コスト削減と生産性維持

外国人技能実習生の受入れは人件費・採用コストの削減にもつながる場合があります。日本人の若年労働力を確保しようとすると、高い賃金提示や求人広告費、人材紹介料など多大なコストを要することがあります。

それに比べ、技能実習生は送り出し機関との協定に基づいて一定の条件下で来日するため、企業は所定の監理団体費用や渡航費補助等は負担しますが、採用難による高額な人件費競争に巻き込まれにくいメリットがあります。

実習生への賃金は地域の最低賃金以上と定められていますが、逆に言えば大半の実習生は最低賃金~相場程度の水準で雇用でき、需要が逼迫する職種でも国内人材より低コストで人員を確保できるケースが多いのです。

例えば地方の単純作業職種では日本人を時給1,200円以上出さないと集められないところ、実習生なら時給1,000円程度でも応募がある、といった例も報告されています(地域の最低賃金がその水準であれば十分集まるため)。このように一定の賃金水準で安定的に人材確保できるのはコスト面で大きな利点です。

また、技能実習生を受け入れることで既存社員の残業削減や業務効率化が進み、結果的に人件費抑制や生産性維持につながる場合もあります。人手不足時には社員に長時間労働を強いるか、高額のアルバイトを投入するしかなかった業務でも、実習生が来てくれれば所定労働時間内で仕事を回せます。社員の過重労働を減らし離職防止につながれば、採用・育成コストの増大を防げます。

さらに実習生受入れを機に作業マニュアルを整備した結果、業務標準化が進んで生産効率が上がったという報告もあります。実習生に業務を教えるため作業手順を見直したところムダが省かれ、結果として社員全体の生産性が向上したというケースです。

例えばある食品工場では実習生用に工程を細分化・可視化したマニュアルを作成した結果、パート従業員の習熟も早まり全体のスループットが上がった例があります。つまり実習生受入れをきっかけに業務改善が進み、コスト削減効果を生むことも期待できるのです。監理団体への支払いや受入れ準備のコストは発生しますが、それを補って余りある効果が得られるケースが多々見られます。

社内の活性化・多様化による効果

技能実習生の受入れは企業組織にも良い刺激を与え、社内の活性化につながります。外国人実習生という新しい仲間を迎えることで職場に緊張感や協調性が生まれ、マンネリ化した現場に変化が起こります。

現場の社員は実習生に仕事を教える中で指導力やコミュニケーション能力が磨かれ、自身の仕事を客観視する機会にも恵まれます。また言葉や文化の壁を乗り越えて協働することで、社員の視野が広がりチームワークも強化されます。実習生受入れ企業からは「社内の雰囲気が明るくなった」「日本人社員がリーダーシップを発揮するようになった」といった声も聞かれます 。異文化交流による柔軟な発想や多様性の受容は、停滞しがちな職場に新風を吹き込みます。

特に業務プロセスの見直しは社内活性化の大きな副産物です。先述のとおり、実習生に仕事を教えるために作業手順書を整備したり、社内ルールを再確認したりすることで組織が引き締まります。

ある受入企業では実習生向けに毎週勉強会を開催し、日本人社員もそれに参加することで職場全体の技能向上につなげています。また実習生とのコミュニケーションには図解や翻訳アプリの活用が欠かせず、それが結果として社内のICT活用や業務マニュアルの標準化を促進する効果も生んでいます。

実習生受入れ企業の事例では「受入れを機に作業マニュアルを刷新したところ、従業員全員の作業効率が上がった」という報告があります。このように、技能実習生の存在が社内改革の契機となり生産性向上や社員教育の強化につながることは大きなメリットです。

加えて、外国人と一緒に働くことで社員の異文化理解が進み、職場のダイバーシティ(多様性)が向上する点も見逃せません。海外の文化や習慣に触れることで社員のモチベーションが上がったり、自社製品・サービスを見直すヒントが得られたりすることもあります。例えば実習生から母国のニーズやアイデアを聞いて新商品の開発に役立てた企業もあります。外国人材との交流は社員にとって刺激的な経験であり、「教える側」の社員も共に成長できるwin-winの関係を築けます。

総じて、技能実習生の受入れは組織の新陳代謝を促し、人材育成風土を醸成する好循環をもたらすのです。

国際展開・多文化対応力の強化

グローバル化が進む現代において、技能実習生の受入れは企業の国際展開戦略にも貢献します。外国人実習生を社内に迎え入れることで、企業は海外の文化や価値観に触れる機会を得て、将来的な海外進出や国際取引に備えた感覚を養うことができます。

実習生との日々の交流を通じて社内に多文化対応力が蓄積され、言語の壁や文化の違いに柔軟に対処できる素地ができます。これは将来、海外に支店や工場を展開する際や、外国人顧客とビジネスをする際に大いに役立ちます。

実際に、長年ベトナム人実習生を受け入れてきたある製造業者(フルヤ工業株式会社)は、そのノウハウを活かして高度外国人材(エンジニアなど)の本採用にも乗り出し、現在では企画開発部門に欠かせない戦力として活躍させています。技能実習生受入れで培った異文化マネジメント力が、社内のグローバル人材登用につながった好例です。

また、帰国した元技能実習生とのネットワークは企業の財産になり得ます。実習期間を終えた人材が母国に戻った後、現地で日系企業に再就職したり、自らビジネスを起こしたりするケースもあります。そうしたOB/OG人材は将来、現地でのビジネスパートナーとなったり、取引先の紹介者になったりする可能性があります。

受入企業にとってみれば「海外に詳しい知人」が増えるようなもので、将来的な国際ビジネス展開の橋頭堡となります。例えば実習生を受け入れていた縫製工場が後にベトナムに合弁工場を設立した際、元実習生が現地社員として加わりスムーズな立ち上げに貢献した例もあります。技能実習生を育てることは、そのまま将来の海外拠点スタッフ候補を育てることにもつながるのです。

さらに、技能実習生受入れ企業という事実自体が社外へのアピール材料になる場合もあります。海外に進出する日系企業同士のネットワークで情報交換が進んだり、「外国人育成に積極的な企業」として国内外で評価されるケースです。受入れを通じて得た海外人脈や異文化理解は社内に留まらず、企業のブランド価値向上や新規事業のヒントにつながることもあります。以上のように、技能実習生の受入れは目先の労働力確保に留まらず、企業の国際競争力強化という長期的メリットをもたらす点で戦略的な意義があります。

5.こういう企業は技能実習生を受け入れた方が良い

技能実習生の受入れメリットを最大限享受できるのは、どのような企業でしょうか。結論から言えば、人手不足が深刻で、外国人を育成・受入れる意欲と体制のある企業が適しています。具体的な傾向として、以下のような企業は技能実習生の受入れによる効果が大きいと言えます。

  • 慢性的な人材難に直面している企業: 地域や業種的に日本人採用が困難な企業は、技能実習生受入れのメリットが大きいです。たとえば地方の農業法人や建設業者、食品加工工場など、求人を出しても応募がほとんど来ないような職場では、実習生が貴重な戦力となります。人手不足で受注を断っていた企業が実習生受入れによって業務拡大できた例もあります。実際、左官・土間工事を手掛ける川村工業(埼玉県)はいち早く外国人実習生の雇用に踏み切り、実習生の増員によって担当できる現場数が飛躍的に増えたといいます。このように慢性的な人手不足企業ほど、実習生受入れによる事業継続・拡大効果は顕著です。
  • 若手人材の育成余力がある中小企業: 自社で新人を教育する土壌のある企業は、技能実習生の成長を促しつつ戦力化しやすいです。特に中小製造業などでベテラン社員が技能継承に努めている企業は、実習生受入れとの相性が良いでしょう。プラスチック製品製造のフルヤ工業(東京都)は15年以上前からベトナム人実習生を受け入れ、定期的に日本語教室を開催するなど手厚い支援を行ってきました。その結果、豊富なノウハウが社内に蓄積され実習生の戦力化もスムーズで、現在では実習修了者を高度人材として正社員登用するまでになっています。このように教育熱心で面倒見の良い企業は、実習生も技術を習得しやすく双方に成功体験が生まれます。自社に新人育成のノウハウがある企業ほど、技能実習生を受け入れる意義は大きいと言えるでしょう。
  • 国際市場を視野に入れる企業: 将来的に海外進出や外国人顧客の開拓を目指す企業も、技能実習生受入れを検討すべきです。実習生との協働は社内に国際感覚を養い、前述したように多文化対応力を高めます。海外取引の経験が少ない企業でも、実習生を受け入れていれば言葉の壁や商習慣の違いに柔軟に対処する訓練になります。例えば介護業界大手のベネッセスタイルケア(東京都)は、人材難の介護職種で積極的に実習生を受け入れるとともに、将来的なアジア展開も視野に入れて社内研修を工夫しています。監理団体に頼らず自社で研修計画を策定し、独自のカリキュラムで介護技能を教えることで実習生の能力向上と企業理念の共有を図っています。その成果もあって実習修了後に特定技能へ移行し引き続き働く人材もおり、長期的に戦力を確保できています。海外人材活用に前向きな企業ほど、実習生受入れによって社内の国際対応力を高め将来の競争力強化につなげることができます。

要するに、「人が足りない」「若手がいない」「海外に目を向けたい」といった課題・目標を持つ企業は、技能実習生の受入れ効果が高い傾向にあります。反対に、日本人だけで十分に賄えている大企業や、外国人を指導する余裕のない企業ではメリットより負担が上回る可能性もあります。受入れには一定のコストと手間がかかるため、現状打破の意欲がある企業こそが適していると言えるでしょう。幸い現在は各地に監理団体や支援機関があり、中小企業でも安心して実習生を受け入れられる環境が整いつつあります。自社の課題に合致するか見極めた上で、前向きに検討することをおすすめします。

6.技能実習生を受け入れた企業の未来像

外国人技能実習生を受け入れ、活用している企業は、将来どのように発展し生き残っていくのでしょうか。日本人労働力の減少が避けられない中、外国人を積極活用する企業こそが今後の日本で競争力を保つと予測されます。技能実習生の受入れを通じて国際的な人材ネットワークやノウハウを蓄積した企業は、国内市場が縮小する将来においても柔軟にビジネスモデルを転換できる強みを持ちます。

例えば実習生OBを現地スタッフとして海外に工場を開設したり、外国人社員比率を高め多言語サービスを展開したりといったグローバル展開が視野に入ります。実習生受入れ企業は社内に多文化共生の素地があるため、新しい在留資格制度や海外人材の受入れスキームにもスムーズに対応でき、労働力確保の面で有利になるでしょう。

政府も2024年以降、技能実習制度に代わる新たな制度づくりを進めていますが、その方向性は**「即戦力となる外国人労働者の受入れ拡充」にあります。具体的には技能実習と特定技能を統合・再編成し、より長期的な就労を可能にする仕組み(仮称:育成就労制度)への移行が検討されています。これにより、企業は優秀な外国人実習生をより長く雇用継続できるようになる可能性があります。

すでに技能実習生を受け入れている企業にとっては、このような制度改正は追い風と言えるでしょう。今まで培った外国人育成ノウハウを活かして、新制度下でも円滑に人材を確保・定着させられるからです。むしろ外国人受入れ経験のない企業との差が開き、経験豊富な企業ほど将来の人材確保競争で優位に立つと考えられます。「外国人を戦力化できる企業」が生き残り、「外国人に縁のない企業」は人材難で淘汰される――そんな時代が訪れる可能性も指摘されています。

また、技能実習生を受け入れた企業は社内に日本と外国をつなぐ架け橋を持つことになります。前述のように帰国した元実習生が将来取引先になるケースもあれば、自社の外国人社員として戻ってくるケースもあるでしょう。実習期間中に築いた信頼関係は国境を越えて続いていきます。それは企業にとって大きな財産であり、新たなビジネスチャンスや技術交流の芽生えとなります。例えば技能実習生OBが母国で起業し、受入れ企業と提携して現地生産を始める、といった未来も十分考えられます。技能実習を通じて育んだ人材ネットワークが将来のグローバル事業展開の礎となり得るのです。

さらに、技能実習生を受け入れる企業が増えることは、日本社会全体にも好影響を与えます。受入れ企業が増加し実習生への待遇が改善されれば、失踪や不法残留といった問題も減少するでしょう。適正な受入れが広がることで実習生が日本に良い印象を持って帰国する人が増え、日本のファンが各国に増加する効果も期待できます。そうなれば海外における日本企業の活動も円滑になり、日本の国際的地位向上にもつながります。つまり、技能実習生を積極登用し共生モデルを確立した企業は、日本の将来を明るくする牽引役にもなり得るのです 。

受入れ企業で働いた実習生が「日本で働いて良かった」と思い帰国していくことは、その企業の誇りであり財産となるでしょう。

総合すると、技能実習生を受け入れている企業の未来像は、人材の多様性と国際性を武器に持続的発展を遂げる企業です。国内人材だけに依存する企業が労働力不足で苦戦する中、外国人材を戦略的に育成・活用できる企業は安定した事業運営が可能になります。実習生受入れ企業はこれからも外国人雇用の先駆者として経験を積み、より良い受入れ環境を整備していくでしょう。その蓄積されたノウハウは他社にも共有され、日本全体の外国人労働者受入れ体制の成熟にもつながっていきます。技能実習制度そのものは今後形を変えるかもしれませんが、「外国人とともに成長する企業」という姿は変わらず、生き残りの鍵を握り続けるはずです。日本の将来を支える一端を担う存在として、技能実習生受入れ企業には明るい展望が開けていると言えるでしょう。

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